わたしは脇見恐怖症・他者視線恐怖症でありながら大学受験を乗り切りましたが、大学生活でも視線恐怖症をずっと抱えたままでした(最終的には対人恐怖症を発症)。
そんな状態でどう学生生活を過ごしていたのか、体験談を書いてみたいと思います。
大学生活に不安を感じている視線恐怖症者の方にとってなにか参考になれば幸いです。

勉強(講義・ゼミなど)

慶應義塾大学日吉キャンパス

学校での勉強は依然として苦痛でした。
講義でもゼミでも視線恐怖症特有の不安感・ソワソワ感が常にあり、落ち着いて授業に集中できなかったです。
通っていた学部の専門分野(商学・経営学)をあまり好きになれなかったので、余計に病気のことばかり考えてしまった気がします。

大教室での講義では、いつもひとりで最後尾の席を死守。
友人と一緒だと高確率で真ん中や前方の席に座ることになってしまうので、友人と違う科目を興味がなくとも選んだりしていました。
おそらく友人たちからは変な奴と思われたかもしれませんが、それよりも自分の心の安定を優先していたのです。

ただ、厄介なのが他人の咳・咳払いです(このころわたしは咳・咳払い恐怖症にもなっていました)。
それらの音を聞くたびビクついてしまい、授業中いつ・どこから聞こえてくるのか不安で仕方ありません。
耳栓をするわけにもいかず対処のしようがないので、恐怖で耐えられなくなったときは教室から何度も逃げ出していたものです。

語学など少人数の授業では、他人が少ないせいかリラックスして授業を受けられたと記憶しています。
こちらは授業の参加者が固定されていたので、自分の席の周囲の人とコミュニケーションを取るようにしました。
おかげで視線や咳(咳払い)が気になっても、大教室ほどには苦痛を感じなかったです。
またプレゼンの課題も定期的に出されましたが、いつも人に見られている意識があるためか全然緊張しませんでしたよ(笑)。

ゼミ(ゼミナール)については、少人数かつ1期目(自分たちが最初のメンバー)のゼミを選びました。
やはり、できるだけ他人の少ないほうが緊張せずに済むからですね。
しかしゼミの内容にまったく興味を持てず、公務員試験勉強の時間確保もしたかったので半年も待たず辞めています(汗)。
自分が関心のない学問は選ぶべきではありません…。

このままでは大学で何も得ていないことになりそうだったので、4年生のとき大学図書館の本を読みあさりました。
内定していた公務員の仕事に関係のありそうな行政・地方自治系の書籍をはじめ、政治、経済、科学の入門書や話題の新書・小説などなど。
授業などより多くを学べたように思います。

……と言いながらも、わたしは4年生のとき留年を経験しているんですけどね(苦笑)。
対人恐怖症が悪化して定期試験をサボり、卒業に必要な単位を落としてしまったのです。
その結果、公務員として働きながら有給休暇を取って遠方から大学に通わなくてはならなくなりました(汗)。
大学に行っても友人はみな卒業していて孤独でしたし、こんな面倒なことになるなら病気を言い訳に逃げなきゃ良かったと後悔しています。

サークル

大学生活での遊びといえば、やはりサークル活動でしょう。
わたしもサークルに所属していたおかげで、視線恐怖症でも学生生活をわりと楽しく過ごせました。

とはいえ最初に入ったバドミントンサークルは大失敗。
バドミントン自体があまり好きではなかったにも関わらず、先輩の勧誘に負けてなんとなく入ったからです。
入学シーズンはサークルや部活の勧誘がすさまじいですが、まわりに流されると中途半端になると思います。

バドサークルは半年で辞め、次にバスケットボールサークルに所属しました。
こちらは好きなスポーツですし、サークルのメンバーにも気の合う仲間が多かったです。
サークル内のイベントは試合と飲み会以外ほとんどありませんでしたが、同期とは旅行に行ったり合コンに参加したりと大学生活の大半をともに過ごしました。

できるだけ人付き合いを避けたいとの気持ちから、まだ出来たばかりのサークルを選んだのも良かった気がします。
先輩は1学年上の人たちしかおらず、人間関係のストレスをあまり感じませんでした。
(歴史のあるサークルだと上下の人間関係が密で、面倒なことも多いようです。)

ちなみにサークルには異性との出会いを期待してもいたんですが、ふたつのサークルどちらでも失敗しています(笑)。
いわゆるインカレサークル(他大学との合同サークル)だと、学内サークルにくらべて接触機会が少なくなりがちで仲良くなりにくいでしょう。
イケメンやコミュ力が高い人なら話は別ですけどね。

人間関係

大学生活での人間関係は前述のとおりサークル関連が中心で、あとは語学の授業のクラスメートくらいでした。
サークル以外の友人関係は接触頻度が低いせいか薄くなりがちで、あまり楽しくなかったです(ゼミ仲間については正視恐怖症発症の原因にもなりましたし…)。

ただ、単位を取る意味では本当に助けられました。
視線恐怖症がつらくて授業をサボり気味だったわたしは、友人にノートを貸してもらったり友人のつてで定期試験の過去問を集めたりしていたものです(汗)。
(あまり頼りすぎると嫌われてしまうのでご注意を…。)

ちなみに浪人して大学に入りましたが、友達づきあいに苦労したことはありません。
お互い年齢差をほとんど意識してなかったです。
ただ現役合格者のほうは明朗快活な印象で、浪人経験者はどことなく疲れた雰囲気がただよっていましたね(苦笑)。

恋愛についてはサークル内で失敗したので、語学の授業で一目惚れした女性と仲良くなろうと試みましたが再び失敗…。
視線恐怖症が災いしてデート中にいつもビクビクしていたのが原因だと思っています。

それでも当時のわたしはあきらめず、サークル仲間と合コンによく参加していました(笑)。
しかしやはりその場限りの出会いが多く、恋愛関係にまで発展した人はほとんどいなかったです。
それに咳・咳払い恐怖症が悪化してからは相手の女性陣のそれにまで恐怖を感じるようになってしまい、合コンそのものを避けるようにもなりましたし…。

そして最後の手段に、学生イベント(学生パーティー)に参加してみました。
六本木のクラブでのイベントということで少しこわかったんですが、そこで人生初の彼女が出来たので結果オーライです。
とはいえ向こうから告白された形だったせいか、付き合ってもあまりウマが合わなかったと記憶しています。
しかも対人恐怖症が発症してからデートをよくドタキャンしていたせいで最終的にはフラれました…。

やはり自分が惚れる異性、相性の合う異性と付き合うほうが恋愛は充実するでしょう。
いまはマッチングアプリや恋活パーティーがあったりと良い時代になりましたね。

バイト

わたしにとってはアルバイトも大学生活のおもな体験のひとつです。
バイトでお金を稼いだおかげで旅行や資格取得の費用を作れましたし、なにより貴重な人生経験を積めたと感じます。
一時期は複数のバイトを掛け持ちして、学生なのかフリーターなのかわからないような状態にもなっていましたが(苦笑)。

お金のためとはいえ、視線恐怖症者にとってバイトは結構つらかったです。
くわしくは「対人恐怖症者のバイト体験談。つらい思いをしながら経験した3つの仕事」という記事で書いています。

大変なことは多かったものの、楽しかったことも結構ありました。
店長が休みのときに職場で飲み会を開いたり、自宅で朝まで語り合ったり、先輩のバイクや車で夜の街をドライブしたりとなかなか青春していたものです(笑)。
職場の同僚にはさまざまな年代・学歴・職歴の人がいたので、その方たちの話を聞くだけでも刺激的だったように思います。

就職・資格

大学であまり勉強していなかったわたしですが、就職に向けた資格の勉強は定期的に行っていました。
具体的にはTOEICと公務員試験の勉強です。

TOEICは就活時のアピールになりそうだったのと、大学受験で鍛えた英語スキルを衰えさせたくないとの理由から受けてみることにしました。
授業の空き時間などを使って大学の自習室で勉強していましたが、他人の咳・咳払いや物音が気になってあまり集中できなかったです。
そのため人のいない空き教室を使って勉強してもいたんですが、そこに他人がやってくると急に落ち着きがなくなりよく逃げ出していました…。

しかもTOEIC本番を受験した際は試験会場の人口密度が高く、対人恐怖症にもなりかけていた当時のわたしには発狂レベルの地獄だったのです。
隣の人との間隔がとてもせまく、脇見恐怖症でもあったわたしはカンニングをしてしまわないか不安で試験どころではありません。
以降、TOEICの勉強は止めてしまいました。

こんな状態では民間企業で働くのは難しいと判断し、次に目指すことにしたのが公務員です。
公務員なら仕事内容も楽そうだしクビになりにくいだろうと思ったわけですね。

試験を突破すれば天国が待っていると信じて、かなり時間を割いて勉強していました。
しかし家に引きこもって勉強していたのが仇となり、大学3年生の終わりころには対人恐怖症や外出恐怖症を本格的に発症しています。
そんな状態でも内定はもらえましたが、その代償は大きいといえるでしょう。

いまは、対人恐怖症者に適した資格はほかにあると考えています。
また、ネットを使って在宅でできる仕事も多いです
わたしのように無理に努力して症状を悪化させる前に、それらの可能性にチャンレンジしてみてはどうでしょうか。

トイレ

トイレもわたしの大学生活を語るうえで欠かせません(苦笑)。
いわゆる「トイレぼっち」というやつです。
大教室や自習室にいるのが精神的に耐えられなくなったとき、校舎内のトイレへよく逃げ込んでいました。

視線恐怖症や対人恐怖症のわたしは、学食・カフェや図書館で時間をつぶせなかったのです。
誰もいない空き教室を探しながら校舎内をさまよい、最終的にトイレにこもるということをよくやっていました。

友人と行動しているときは平気で、トイレに逃げ込むようなことは一度もやっていません。
ところが一人になると急に緊張感や不安感でいっぱいになり、他人の視線から逃げたくてたまらなくなってしまいます。
友人となら旅行や合コンなどアクティブに行動できるいっぽうで、ぼっちになると何もできない自分に嫌気が差してもいました。

対人恐怖症が本格化した大学3年次以降は、習慣のようにトイレで過ごしていた気がします。
お昼ごはんを一緒に食べる友人がいないときは売店やコンビニでおにぎりを買ってきて、いわゆる「便所飯」です。

トイレにいる最中は一時的に心が落ち着きましたが、回数を重ねるにつれ対人恐怖がどんどん増していきました。
やはり恐怖は逃げるほど大きくなるものなので、このような逃避行動は絶対におすすめしません(「その場から逃げようとしない」)。

視線恐怖症でも人を避けずに行動したおかげで、途中までは普通に近い大学生活を送れていた気がします。
しかし対人恐怖症を本格的に発症してからは彼女にフラれたり引きこもり状態になったりやがて留年したりと、ボロボロな生活ぶりです。
トイレぼっちなどの逃げ癖を止めておけば、そこまで事態は悪化しなかったかもしれません。