対人恐怖症で苦しい思いをしていると、大学へ行くのもつらいし大学生活もしんどいですよね。
だからといって休学をしようとしているなら、それがたとえ就職のためであっても退学を選んだほうがマシでしょう。
サラリーマン以外の働き方もあります。

休学は問題の先送りにしかならない

少なくとも対人恐怖症については、休学したところで問題の先送りにしかなりません。
復学すればまた恐怖が目の前にあらわれ、ふたたび大学に行きたくないという気持ちになるはずです。

わたしは学生のころ休学したことはありませんが、対人恐怖症で苦しかったので授業をよくサボってしまっていました。
しかしサボればサボるほど症状は悪化してしまったんです。
授業に出席する心理的ハードルが高くなり、通学用の電車に乗ることはおろか自宅玄関のドアを開けることにすら苦痛を感じるようになりました。
恐怖から逃げるほど恐怖心がどんどん強くなっていったわけです。

前向きな退学

休学中に症状を治そう(改善させよう)としても、対人恐怖症の場合は残念ながらなかなか難しいように思います。
休学を選んだ時点で現実逃避をしているからです。
おそらく休学中も恐怖から逃げ続けてしまうでしょうし、むしろ症状が悪化してしまうかもしれません。

対人恐怖症を治したいのであれば、恐怖の対象である人に慣れることが大切だと考えています。
大学に通い続けたほうが人と接する機会は多いので、症状改善に効果的であるはずです。
休学した場合は自宅にいることが大半になるため、症状のリハビリには適していないのではないでしょうか。

また、対人恐怖症は時間が経てば勝手に治る病気ではないとも感じています。
実際わたしは数十年以上、この病気を抱え続けているからです。
休学中に何もせず自然に症状がおさまることはおそらくありませんし、やはり問題の先送りをしているだけと言わざるをえません。

大卒という自信をつけるために休学してでもなんとか卒業したいという人もいるかと思います。
しかし留年を一度して卒業したわたしからすると、 休みながら大学を卒業したところであまり自信がつかない気がするのです。
「対人恐怖症でも大学を卒業できた」という自信はつくでしょうが、「あのとき逃げてしまった」という挫折感も残ってしまうでしょう。
こうした点からも休学はおすすめできません。

休学をしているようでは就職できても行き詰まる

休学という制度は、最終的には大学を卒業したいから利用するものですよね。
休学しようとしている学生さんのなかには、将来の就職のため大卒という学歴を手に入れておきたいと考えている人も多いかと思います。
しかし対人恐怖症を理由に休学するようでは、就職できてもいずれ行き詰まるでしょう。

大学生は自分のペースにあわせて自由に時間割を組めたりしますが、サラリーマンは基本的に毎日、朝から晩まで働かなくてはなりません。
学生という自由な身分でいるにも関わらず休学をしないとやっていけない状態なんですから、将来サラリーマンとして働くのは難しい気がします。
休学して現実逃避をするような人が毎日、職場に通い続けられるとは思えないのです。

しかもサラリーマンは休学期間(3カ月以上)のようなまとまった日数を休めず、病気欠勤は1カ月弱となっています。
それ以上を休みたい場合は「病気休職」となり給与が支給されないのが一般的ですので、自分の心身だけではなく生活にも悩みを抱えることになってしまうかもしれません。

そして復職をすれば、また健常者と同様の仕事・成果を求められます。
大学のときのように自分の病状にあわせて物事を進められないわけです。

ちなみにわたしは以前に公務員として働いていましたが、 対人恐怖症者にとって毎日8時間勤務という労働スタイルはつらくてたまりませんでした。
定期的に休まないとやってられない状態で、結果として病気休暇や有給休暇などを取りすぎてしまいクビになっています

民間企業とくらべれば恵まれた労働環境とはいえ、休みすぎるとさすがにクビになるという失敗事例です。
やはり社会は大学ほど甘くないんですね。

そもそも対人恐怖症を抱えながらのサラリーマン(デスクワーカー)の仕事は大変だろうと感じます。
組織で働くことになりますので、日常的に人と接しなければなりません。
さらにわたしのように視線恐怖症を抱えていると、まわりに囲まれながら働くのは困難です。

休学するならまだ退学のほうが良い

こうした理由から、対人恐怖症者にとって休学はあまり意味がないように思えます。
将来のためにというなら、まだ退学を選んだほうが良いです。
退学をしたほうが、余った時間やお金を職業探しや自己研鑽に使えます。

対人恐怖症でもやっていけそうな仕事をみつけ、その目標に向けて行動しましょう。
たとえば、そうした仕事への就職に役立ちそうな資格を取得したいなら、大学を退学して空いた時間をその勉強にあてる。
専門学校に行く必要が出てきたのなら、退学して浮いたお金で学費をまかなうといった具合にです。

わたしはいま在宅の自営業をしていますが、びっくりするくらい学歴が無意味です(苦笑)。
あんなにつらい思いをしながら大金を払って大学を卒業したのに、何の恩恵も感じていません。
大学に通う時間を、いまの仕事に役立つスキルを磨いたり経験を積んだりする時間にあてておけば良かったと後悔しています。

もちろん退学は勇気がいる決断でしょう。
ただ、休学しながら大学を卒業したところで、その学歴を十分に活かせるのはサラリーマンくらいしかありません。
そして対人恐怖症を抱えながらサラリーマンとして働き続けるのは前述のとおり困難です。
だったら退学をして、別の道を模索したほうが良いと考えています。

一度サラリーマンになってみたからこそ言えることなのかもしれませんけれどね。
当時は「公務員なら対人恐怖症でもできる」と思っていましたし。
とはいえわたしは休学を考えていませんでしたので、事情は違うでしょう。
休学しようと悩むほどなら、やはりサラリーマンになるまでもなく退学して別の働き方を考えたほうが良いと思います。

対人恐怖症で大学を休学するのは、問題の先送りにしかなりません。
将来のために休学をするつもりでも、まだ退学のほうがマシでしょう。

サラリーマンは対人恐怖症もちには過酷です。
休学して中途半端な状態でいるより、退学して症状に合った働き方をじっくり探してみることをおすすめします。