対人恐怖症(おもに視線恐怖症や咳・咳払い恐怖症)を抱えている身ではありますが、昔は外でアルバイトをよくやっていたものです。
症状でつらい思いをしながら、キッチン(厨房)スタッフ、店員、塾講師といった仕事を経験しました。
今回は、これらのバイトの体験談を書いてみたいと思います。
飲食店のキッチンスタッフ
大学生のころにキッチン(厨房)スタッフのバイトをやりました。
接客業などとくらべれば裏方の仕事というイメージがあり、対人恐怖症でもできそうな気がしたからです。
しかし実際に経験してみて結構つらかった思い出が多数あります。
まず最初に働いた飲食店(中華料理屋チェーン店)は、厨房が客席から丸見えで裏方とはいえない環境でした。
人生初のアルバイトだったこともあり、応募時に気がつかなかったんです(汗)。
厨房スタッフはみんな裏方だと思い込んでいましたので…。
病気克服の訓練だと思って働き始めましたが、やはり厨房に立ってみると客に見られているような気がしてしまいました。
他者視線恐怖症・自己視線恐怖症にとってはなかなかの地獄で、ソワソワしてしまい落ち着いて仕事ができません。
そんなわたしの様子や気配に反応してか客や同僚の咳・咳払いがよく聞こえてくるのも苦痛でした(このとき咳・咳払い恐怖症になりかけていた気がします)。
こうした状況に耐えられなくなり、このバイトはわずか2カ月くらいで辞めてしまったのです。
その半年後くらいに、また飲食店(定食屋チェーン店)で働き始めました。
失敗を活かして別の業種のバイトをする選択肢もありますが、外食バイトはまかないが付いているので学生にはありがたいんですよ(汗)。
ここでは1年半くらい働けました。
客席からみえない場所にキッチンがあり、あまりキョドらずに仕事ができたからでしょう。
ただキッチン内の同僚には脇見恐怖症の症状が出てしまい、同僚が咳や咳払いをするたびに自分の存在が迷惑なのかという被害妄想をよくしていました。
極めつけは、同僚の女性2人組に陰口を叩かれたことです。
仕事中にわたしのほうをみて「いまチラ見してきた!(笑)」と話しているのを何度か聞いてしまい、とてもショックを受けました。
やはり自分は脇見恐怖症なんだなぁと。
さらにわたし自身、他者視線恐怖症の症状のせいで仕事をサボってしまうこともありました。
その店ではホールスタッフが忙しいときはキッチンスタッフが客席の食器を片づけるんですが、わたしは客の視線がこわくてほとんどやらなかったんです。
同僚に頼まれても無視をして、自分の仕事で手一杯なフリをしていました…。
そんな状況が続いたため当然クビに。
わりと仲の良かった店長から「もう来なくていいよ」と言われてしまったのです。
自業自得なんですが、このとき初めて「自分は病気だから外での仕事は無理かも」と感じたのを覚えています。
とはいえ生活費のため働かなければいけなかったので、クビになって1カ月後くらいに別の飲食店(ファミレスチェーン店)でバイトを再開しました。
やはりここでも視線恐怖症でつらい思いをしてばかりです。
わたしを先輩として頼りにしている様子だった高校生のバイト君が、わたしの脇見恐怖症(による挙動不審な様子)に気づいてから妙によそよそしくなったり。
洗い場で働いているわたしの元へ食器を持ってくるたび咳払いをする女性ウェイトレスがいたり。
わたしが自己視線恐怖症であるせいか、同じキッチンスタッフの先輩が「なにガン飛ばしてんだよ」と思いきり蹴ってきたり。
嫌なことが多々あったので対人恐怖症が悪化していきました…。
こんな感じで、3つの飲食店で合計2年くらいキッチンスタッフとして働いた経験があります。
どの店でも基本的に洗い場の仕事です。
普通はそのうち調理スタッフにステップアップするものなんですが、対人恐怖症のせいでキョドってばかりいたためか任されませんでした。
でも皿洗いがもっとも落ち着く仕事だったので気にしていません。
調理場はほかのスタッフに囲まれて仕事をしなければならず、隅のほうにある洗い場とは環境が違いますからね。
視線恐怖症(とくに脇見恐怖症)的にはつらい気がします。
中古本屋の店員
これも大学生時代のときで、中古本屋(ブックオフみたいな店)のバイトをやっていました。
仕事内容に接客業務があるんですが、当時は対人恐怖症克服の訓練になると思って働いていたものです。
しかし症状は少しも改善しなかった気がします。
客の視線や存在が気になってしまって、やはり仕事に集中できません。
レジで会計をしているときはカウンター越しに客からガン見されている気分になりますし、本棚を整理しているときは立ち読み中の客をチラ見してしまわないか心配してしまいます。
そんな妄想や不安でキョドりながら働いていたためか、客や同僚の咳・咳払いがしょっちゅう聞こえました。
おかげで仕事中は常に他人の視線や咳(咳払い)を警戒している状態です。
1日6~8時間くらいの勤務なんですが、それだけの長時間を他人と同じ空間で過ごすごとが苦痛でした。
キッチンスタッフは隅のほうで作業できますが、本屋店員の場合そうはいきません。
いつも人前に身をさらした状態で作業をしなければならず、緊張の連続でした。
また(加害妄想かもしれませんが)、わたしがその本屋で働き始めてからすぐ数人の同僚が辞めていったんです。
一緒に仕事をしていたときチラ見をしてしまったせいなのかと妄想をしてしまいます。
飲食店のバイトのときも似たようなことがあったので、脇見恐怖症の罪悪感がどんどん高まっていきました。
ここまでがわたしの学生時代のバイト体験談です。
結局、対人恐怖症を克服できるどころか悪化してしまったといえるでしょう(苦笑)。
ちなみに本屋のバイトは前述の定食屋と掛け持ちでした。
当時お金がなかったからとはいえ、病気に悩みながらよくやっていたなと我ながら感心します。
個別指導塾の講師
話は変わり、公務員をクビになって自宅療養を始めてから1年後、対人恐怖症のリハビリも兼ねて個別指導塾のバイトをやりました。
個別指導の講師なら人目があまり気にならなそうだし、なんとか働けるかもしれないと思ったからです。
ところがこのバイトも症状的につらい思いをしました。
机に仕切りがあるのは良いんですが、教えている生徒に脇見恐怖症を発動してしまうのです…。
そのせいか生徒は咳・咳払いをしたり貧乏ゆすりしたりしていたので、わたしのチラ見が原因なんじゃないかとよく被害妄想をしていました。
また個別指導とはいえ教室内にはたくさんの講師と生徒がいるわけなので、学生時代の本屋バイトと同様の苦痛も感じましたね。
自分と同じ空間に人がいることを異常に警戒してしまうわけです。
仕切りがあるのに周囲の視線や咳(咳払い)が気になってしまって、仕事に集中できませんでした。
また実は塾講師も、生徒をお客さんと考えれば接客業に近いものがあります。
相手は子どもとはいえ他人なので、心のどこかに緊張感がありました。
以前からうっすら気づいてはいましたが、子どもに対しても対人恐怖の症状が出てしまう自分にショックを受けましたよ…。
こうしたわたしの様子をみてか塾長はわたしへの態度を急に冷たくし、結果わたしは1カ月でバイトをクビになっています。
もう外での仕事は無理だと確信し、社会恐怖症のような精神状態にもなりました。
ちなみに対人恐怖症とは関係ないですが、塾講師のバイトでは職場にひとりぼっちでいるような孤独感も強かったです。
ほかの講師は大学生ばかりで、生徒は元気な小学生や中学生が大半。
そんな場所に自宅療養明けのアラサー男がひとりポツンといるわけです…。
教室が活気にあふれていて、メンヘラの自分にふさわしくない場所のように思えました。
学生時代にバイトしていたときでは抱かなかった孤独感です。
自宅療養が長引いたことで社会への適応が難しくなっているのを感じました。
以上の3つが、わたしのアルバイト体験談になります。
わたしと同じ対人恐怖症者にとって、なにかのヒントになればうれしいです。
たとえばキッチンスタッフなら、客席から見えないかどうか確認してから働くことをおすすめします。
店員などの接客業務は、わたしには厳しかったです。
塾講師のバイトでは、職場の雰囲気を知っておくことも大切だと思います。
とはいえ今はネット上にも仕事がたくさんありますし、無理をして外でバイトをする必要はなさそうですけれどね。
厳密にはバイトではありませんが、クラウドソーシングサイトなどで働くのもアリでしょう。