高校生時代に脇見恐怖症になってしまいましたが、同じくらいの時期に自己視線恐怖症も発症しています。
脇見恐怖症に至る過程のなかで自己視線恐怖症にもなっていった感じです。
目つきが悪いとの思い込みから自己視線恐怖症が発症
前述の脇見恐怖症のきっかけとなった、学校の授業中でのとある男子の貧乏ゆすり。
かなり苦しい思いをさせられていましたので、なぜあれほどまで貧乏ゆすりをするのだろうと原因究明に必死でした。
そのなかで至ったひとつの仮説が、自分の目つきが相手に不快感を与えているのではという説。
わたしの目が一重で目つきが鋭いほうだから、その男子はストレスを感じて貧乏ゆすりをしているのではと思い込んでしまったんです(こうした妄想の癖はいま思えば加害妄想ですし、「思春期妄想症」ともいうそうです)。
中学生時代にいじめられた思い出(同じ学校の部活の先輩に「ガン飛ばしてただろ」と因縁をつけられた話)も仮説を後押ししました。
ガンを飛ばしているように勘違いをされたのはわたしの目つきがそもそも悪いからなのだろうと考えたわけです。
過去の記憶とつながった気がしました。
やはりわたしが目線を向けると人は不快になるらしい…。
そう強く思うようになったのをきっかけに自己視線恐怖症が発症することになります。
ちなみに中学生のころから、目つきをよく気にするようにもなっていました。
通っていた塾の講師と面談をしたとき「君の目つきにはやる気が感じられない」みたいなことを言われ、自分の視線が相手に与える印象というものを過剰に意識するようになりました。
授業中、「いまの目つきは先生にどう思われているかな」とよく考えていたものです。
そのときは不安を感じていませんでしたが、こうした癖は自己視線恐怖症になる原因のひとつといえるでしょう。
加害妄想により自己視線恐怖症が悪化
さらに脇見恐怖症や他者視線恐怖症の加害妄想が自己視線恐怖症を悪化させました。
「横目でチラ見してしまっているのがバレたらこわい」 「人に見られるのが苦しい」といった気持ちがわたし自身にあるため、視界に人がいるとその人たちを監視しているような気分になってしまい視線を向けられません。
しかも視線を向けまいと意識するほど、視界にいる人が反応したりするので罪悪感も抱きます。
自分の目つきだけでなく、視線についても周囲の反応と結びつけて考えるようになったわけです。
通学中の電車でわたしの向かいの席に座る人が高確率で貧乏ゆすりをするのも。
授業中、隣だけでなく斜め前や前にいるクラスメートが落ち着かない様子になるのも。
廊下ですれ違う見ず知らずの生徒の何人かが、わたしが通り過ぎるときに顔を下に向けるのも。
みんなわたしの目つきや視線に反応して不快感を示したり、わたしを避けるような行動に出るのだろう。
そんなふうに思い込み、自己視線恐怖症がどんどん本格化していくことになります。
自己視線恐怖症を自覚してからは、人に迷惑をかけないために毎日できるだけ人を見すぎないよう心がけていました。
電車に乗っているときは向かいの席の人をガン見しないよう下を向いているか、寝たふりです(本を読みたいけれど脇見恐怖症のせいで読めません)。
授業中に黒板の字を写したいときは、前方の人がどうしても視界に入るので急いで前を見てノートに書きます。
廊下で誰かとすれ違うときは下を向くか、外の景色をながめるかしかありません。
とくに脇見恐怖症のせいで顔を横から見られるのが嫌だったわたしは、人の横顔が視界に入るとすぐに視線をそらしていたものです。
しかしそうした逃避行動をすればするほど、学校や電車だけでなく日常のいろんな場面で自分の目線をどこに向ければ良いのかわからなくなりました。
目線の置き所がおぼつかず、目がキョロキョロ動いてしまうんです。
そうなると人から不審に思われたり不快感を示されたりすることが増え、余計に症状が悪化していきます。
悪循環ですね。
人への気づかいから視線を送りすぎないよう努力しているのに、なぜ相手はこっちに何の配慮もないんだ…。
こんな不満も湧きあがってくるようになり、ますます苦しい感情に悩まされました。
もしかするとこのとき、対人恐怖症のベースとなっている「人に対する嫌悪感」のようなものを抱き始めたのかもしれません。
いま考えてみると、自分勝手なこじつけなんですけれどね…。
相手はこちらの事情などわかりませんし。
当時は自分の目つきを良くしようと、一重を二重にしようとも頑張っていました。
手の爪でうえまぶたに何度も線をつけてクセづけをしようとしたり、アイプチを使ったり。
どちらも成功しませんでしたが、目つきが良くなれば自己視線恐怖症も脇見恐怖症も治ると信じていたものです。
大学生になってから目の二重整形手術を受けたこともあるんですが、症状は少しも改善しませんでした。
治療には自分の見た目よりも考え方を変えることが大切だと、身をもって痛感しましたよ…(苦笑)。
このように自己視線恐怖症は、脇見恐怖症の合併症のような形で発症しました。
脇見による相手の反応の原因が自分の目つきだと思い込んでいたわけですね。
それをふまえると、自己視線恐怖症を克服すれば脇見恐怖症も改善するかもしれません。
自分の目つきに何の問題もないと信じられれば、脇見の関係妄想もしにくくなる気がします。