昔つきあっていた彼女(いまの妻)と再会してから7年くらい経ち、わたしは結婚することを決意しました。
自分が対人恐怖症(視線恐怖症咳・咳払い恐怖症)であること。
氏の選択について親に反対されていること。
これらをふまえると迷いはあったんですが、ついに彼女との入籍を決断しました。

対人恐怖症にもかかわらず結婚を決めた理由

対人恐怖症になってからわたしは結婚なんて少しも考えてきませんでした。
人を避けて生きようとする思考パターンのまま結婚生活を送れるとは思えないからです。
妻には申し訳ないですが、いまでもそう感じることが多々あります。

しかし妻と長年つきあってきて、結婚の責任をとらないといけない気もしてきたのです。
妻にはいろいろと面倒をみてもらいました(いまもですが…汗)。
買い物に付き添ってもらったり、お出かけや旅行に連れていってもらったりなど、対人恐怖症のリハビリを行ってくれていたわけです。

なによりの理由として、わたしに人間らしさを取り戻してくれたのは妻にほかなりません。
ほとんど誰とも話さず孤独に暮らしていたころとは自分の顔つきがまるで違います。
約7年間、毎日のように電話をし、妻との絆を深めていったことで生き生きとした顔になっていったんでしょう。

結婚を決断

孤独に生きてもさびしいとはあまり思いません(いまも孤独生活の願望が多少あったりします苦笑)。
しかし人はどうしても人と関わって生きていかねばならない以上、自分のなかで人間らしさが失われることに危機感があるのです。
わたしのような精神疾患者が孤独で居続けるのは、自己破滅への道をたどっているように思えるんですよ。

また、妻との結婚生活をつうじて対人恐怖症が改善するかもしれないという期待もあります。
わたしは一人でいると、どうもネガティブに考えすぎたり悪い妄想をする傾向にあるからです。
大学生時代の一人暮らし中に対人恐怖症が発症したのが、その証拠でしょう。
視線恐怖症で悩んでいた予備校生時代は寮生活のおかげで病状が悪化せずに済んだので、結婚して妻と共同生活をおくれば同じように対人恐怖が薄れていくのではとも考えています。

実は今まで妻から何度も結婚をアプローチされていましたが、いつも断って婚活を勧めていました。
心の健康な人をみつけたほうが幸せになれるから…と。
でも妻はどうも婚活に本気になれなかったようで、その根底にはわたしの対人恐怖症を治してあげたいという気持ちがあると感じます。
その思いやりに応えられるよう、少しずつ自分を変えていくつもりです。

入籍時の氏の選択で親に反対されるが押し切る

結婚することに決めたものの、スムーズに事は運びませんでした。
理由はもちろん氏の選択に関する親との意見の食い違いです。

わたしたちのあいだでは意見が一致していました。
妻は公務員、わたしは在宅の自営業者なので、仕事上の利便性をふまえて妻の氏を選択することに決めていたのです。
もし夫婦別姓が認められるのなら、夫婦別姓を選びますけどね。

しかしこの決断は、やはりわたしの両親(とくに父親)に反対されました。
長男に家を継いでほしいという気持ちや、息子が家族から抜けてしまうような感覚があるからでしょう。
妻の実家と養子縁組を行うわけではないんですが、わたしの父・母からすれば息子が養子に行ってしまう気分になるのはわかります。

両親に氏の変更について話をした際、わたしは初めて父の涙をみました。
それがどんな涙だったのかわかりませんが、そのとき父の家族の一員なんだと強く自覚したのは確かです(自宅療養中いろいろあっただけになおさらです)。
自分の決断はこれで本当に良いのか、迷いが出てきました。

ただ、妻に自分の氏を名乗らせ、一家の主になるほどの覚悟が持てなかったのも事実です。
心を病んでいるのに家を守れるのか、強い不安があります。
健常者の妻のほうがその役割に適している、という見解がわたしたちにはあるわけです。

わたしたち夫婦にとって結婚生活は親と送るものではありません。
お互いの親から離れた土地で、新しい家族を作り生きていくのです。
わたしたちが暮らしやすいのはどちらの氏の場合かを慎重に考え、決断すれば良いと考えました。

こうしてわたしたちは親の反対意見を押し切る形で婚姻届を提出。
両親に入籍を報告した際、父も母も「名字が変わったからといって息子であることに変わりはない」と言ってくれたのが救いです。

まさか対人恐怖症や視線恐怖症の身でありながら結婚するなんて想像していなかったですよ。
孤独な一人暮らしも悪くないんですが、長年つきあい続けてきた妻を見捨てたら本当にクズ人間だという責任感がありました。
氏についての決断は本当に苦渋のもので、婚姻届の「氏の選択」欄にチェックを入れるのが最後までためらわれましたが、もう決めたことなので振り返らないようにしています。

親の反対を押し切って入籍したわけですので、わたしたちの結婚は世間的にみれば円満とはいえないでしょう。
実際、わたしの両親は妻に会う必要がないし、会いたくもないと言っています(汗)。
また妻の両親のほうも、こういう事情をふまえて無理にわたしたちに声を掛けてきません。
なにせ両家の顔合わせ、結納や結婚式は行っていないのですから(苦笑)。

とはいえ、どちらの両親もわたしたちの結婚そのものについて反対しているわけではないですけどね。
基本的にはふたりで決めることだから好きにやりなさい、という印象を受けます。
両家の交流がないのが気がかりではありますが、わたしたちの決断に理解を示してくれた親たちに感謝です。