家族や恋人といった身近な人、友人や同僚・部下が対人恐怖症に悩んでいる場合、どのように接すれば良いのか書いてみました。
専門的な根拠はないですが、対人恐怖症者のわたし自身が 「こんなふうに接してほしい(または接してはいけない)」と思う方法になっていますので多少は参考になるはずです。
基本的な接し方をはじめとして、家族恋人友人同僚・上司は対人恐怖症者にどう関わりを持てば良いか5パターンに分けてまとめています。

基本的な接し方

家族、恋人、友人、同僚・上司のどんな立場にも共通する基本的な接し方として、壁を作らないことが何よりも大切です。

対人恐怖症者は、人をこわいと思ういっぽうで人に避けられることを嫌がります。
なので特別視をせず、普通の付き合い方を心がけましょう。
医師やカウンセラーから専門的な指示が出ているなら話は別ですが、基本的には対人恐怖症者と健常者との境界線を引かないようにします。

いままでどおり、話す必要がある場面では話しかければ良いんです。
会話をしなければならないのに、相手が対人恐怖症だからという理由で話しかけるのを遠慮するのは止めましょう。
壁を作ることにつながってしまいます。

会話だけでなく、何かの頼み事や誘いなどについても遠慮は必要ありません。
「対人恐怖症の人には難しいかな…」と決めつけず、健常者と同じように接しましょう。
できるかできないかは、対人恐怖症者本人の判断にまかせてあげてください。

逆に対人恐怖症者が症状のつらさを理由に頼み事をしてきたときは、安易に引き受けてはいけません。
本人の症状改善を望んでいるなら、本人に自力でやらせるか一緒にやってあげましょう。
「対人恐怖症だから仕方ないか」とすぐ引き受けるのではなく、「自分でやったほうがリハビリになるよ」などと言ってあげることもやさしさです。

家族の接し方

対人恐怖症者への接し方

家族、とくに自分の子どもが対人恐怖症者の場合の接し方についてです。

まず、子どもの対人恐怖症について批判したり嘆いたりしてはいけません。
人格を否定された気分になり、ますます人を信じられなくなってしまいます。
親子関係はたとえ縁が切れても簡単に忘れられないものでしょうから、そうした批判や嘆きはいつまでも心の傷として残り続けるはずです。

自宅で一緒に生活している場合、食事は家族みんなで一緒にとりましょう。
対人恐怖症になると自室などに閉じこもって食事をとりたくなりますが、親はそれを許してはいけません。
食事くらいはリビングでとるようにしないと、子どもが部屋に引きこもりがちになってしまいます。

できれば食事以外でも、一緒にテレビをみるなど子どもと接する時間を増やしたほうが良いです。
対人恐怖症は人づきあいに慣れていない状態でもあるので、親との密なコミュニケーションは良いリハビリになるでしょう。
散歩や買い物に誘ったりするのも良いですね。

そのほか、夜更かしをさせてはいけません。
日光を浴びる生活を送ったほうが体内にセロトニン(恐怖心をやわらげる物質)が増えやすく、対人恐怖症の改善につながります。
たとえ自分の子どもが一般的には大人の年齢であっても、生活習慣を管理してあげてください。

恋人の接し方

恋人として対人恐怖症者とお付き合いをする場合は、相手を引っ張っていく姿勢で接しましょう。
対人恐怖症者はいろいろな面で受け身の姿勢になっているので、リードしていくような人と相性が良いはずです。

たとえばデートやご飯に行きたいなら、健常者の恋人のほうから誘う必要があります。
対人恐怖症者のほうから誘ってくることは期待できません。
人や外出をこわいと感じる病気が対人恐怖症ですからね。

相手が嫌がっていても無理に誘って大丈夫?と思うかもしれませんが、過度の心配は不要でしょう。
対人恐怖症者は、症状的につらい場面であっても恋人がいると頑張れたりするものです。
わたしも彼女(いまは妻)のおかげで、付き合いながら外出のリハビリができています。

また結婚や同棲など、ふたりの関係を進展させたいときも健常者側が引っ張っていきましょう。
やはり対人恐怖症者のほうからは積極的にアプローチしてきません。
わたしも含め「対人恐怖症だから結婚してはいけない」と考えている人は多い気がします。

「俺(私)について来い!」という感じで接すると、お付き合いが長続きするはずです。

友人の接し方

対人恐怖症者との友だち付き合いを続けるには根気がいります。
恋人の接し方と同じく、健常者である友人のほうから定期的に声をかける必要があるでしょう。
対人恐怖症者のほうから連絡が来ることはほとんどありません。

また対人恐怖症になると人に会うのが嫌になり、友人関係もないがしろにしがちです。
友人からの電話を無視したり、遊ぶ約束を破ったりします。
とはいえ、友人から気にかけてもらうこと自体は嫌なわけではありません。

こうした特徴を理解し、対人恐怖症者に愛想をつかさず付き合いを続けられるかどうかがポイントです。
相手が急によそよそしくなっても、「今はひとりになりたいんだな」と思いやり、しばらくしてまた連絡してあげてください。
そのときに応じて対人恐怖症者との距離を調整しながら接していくと友人関係を長く保てます。

同僚・上司の接し方

会社などの職場に対人恐怖症者がいる場合、同僚は長い目で見守りましょう。
過保護は不要ですが、「できない人」と決めつけて存在を無視するようなことはしないでほしいところです。

対人恐怖症者は職場環境にだんだん慣れていくにつれ、仕事のパフォーマンスを発揮するようになります。
わたしも以前に外で働いていたとき、職場に慣れてきて症状が少しおさまり能率が上がりました
対人恐怖症の人は元々まじめな性格なので、いつかきっと同僚の力になるはずです。

上司など上の立場の人もすぐにクビと判断するのではなく、しばらくは対人恐怖症者を信じてみてください。
まじめな性格の持ち主ならその期待に応えようと、できる限りの努力をし働いてくれるでしょう。
もちろん対人恐怖症者の様子がおかしくなるなど何らかの危険信号を察知したら、休暇を与えるなど適切な対処をするのが管理者の役目かと思います。

基本的には、対人恐怖症の人が相手でも健常者と同様の接し方・付き合い方でOKです。
家族や恋人などの立場におうじて方法はいくつかありますが、根本的な考え方としては「対人恐怖症者と健常者との境界線を引かないこと」に尽きるでしょう。