対人恐怖症とコミュニケーション障害の違いがわからず混同している方がいますが、両者はまったく別物です。
コミュニケーション障害の意味やその原因などをふまえれば、対人恐怖症とはかなり違うといえるでしょう。

コミュニケーション障害とは

コミュニケーション障害

「コミュニケーション障害」とは、身体的または精神的な障害を原因として人とのコミュニケーションがうまくできない状態のことを意味します。
いわゆる「コミュ障」といわれているもので、ネットや日常会話でよく見聞きする言葉ですね。

コミュニケーション障害の原因のひとつの身体的障害としては、耳が聞こえない(聞こえにくい)、声が出せない(出しにくい)といった障害があります。
そのような状態であれば人とコミュニケーションが満足にできないのは想像できるかと思います。
老化現象(耳が遠くなる、など)もこの身体障害に当てはまるでしょう。

もうひとつの精神的障害としては、うつ病、統合失調症といったものが有名です。
対人恐怖症については、こうした精神障害のなかには含まれていません。
対人恐怖症は神経症の一種であり、行政機関では(なぜか)精神障害と認めてもらえないケースが多くなっています。

このように「対人恐怖症は精神障害ではない」とするなら、対人恐怖症はコミュニケーション障害の原因(「精神的障害」)には該当しないといえるでしょう。
たとえ「対人恐怖症は精神障害である」としても、それはあくまでコミュニケーション障害の原因のひとつといえるだけです。
いずれにしても対人恐怖症とコミュニケーション障害は同義ではありません。

対人恐怖症との大きな違い

むしろ対人恐怖症とコミュニケーション障害には大きな違いがあるとわたしは考えています。
それは「人への恐怖心」です。
対人恐怖症とは?自己診断の基準と10個の具体的症状例」という記事でも書いてありますが、人をこわいと感じる思考がなければ対人恐怖症とはいえないでしょう。

コミュニケーション障害はあくまで人とのコミュニケーションに悩むものであり、人におびえるものではないのです。
コミュニケーション障害の方は、人と会話するのが苦手だからといって人を避けて生きようとまではしないかと思います。
人と直接コミュニケーションをとる場面以外は問題なく日常生活ができるのなら、対人恐怖症では決してありません。

わたしのような対人恐怖症者は、状況がもっと深刻です。
人がこわくて近所のコンビニにすら行けないときが多々あります。
コミュニケーション障害の方でこういう悩みを持っている人は少ないのではないでしょうか。

たとえば身体障害を原因としてコミュニケーション障害になった方の全員が「人への恐怖心」を抱いているかというと、そうではないでしょう。
人の声がよく聞こえないから人がこわい…とはならない気がします。
また、うつ病や統合失調症の患者がすべて対人恐怖症にもなっているかというと、そうでもないのです。
そうした精神障害があっても人と接するのは平気という方が結構います。

人の悩みに大小はないので、コミュニケーション障害で悩む方もそれはそれでつらいでしょう。
ただお伝えしたいのは、対人恐怖症とコミュニケーション障害はかなり違うということです。

対人恐怖症はコミュニケーション障害のひとつの原因だとは思いますが、両者のそれぞれの症状は似ていません。
コミュ障でも大半の方は人と接しながら生活できます。

対人恐怖症は、人をこわがる病気。
コミュニケーション障害は、会話などを苦手とする障害(だけど人をこわがらない)。
…というように区別してみてもらえればと思います。