対人恐怖症になると被害妄想・加害妄想などをしがちですが、そうした妄想癖は百害あって一利なしです。
癖をやめなければ、さらに妄想が進み統合失調症を発症させる恐れがあります。
関係妄想(自分と身の回りの物事になんらかの因果関係があると思い込む)や、注察妄想(人に見られている・監視されていると思い込む)などの症状にとらわれ続けてしまうかもしれません。

わたし自身も妄想の癖がいまだ治らず、統合失調症になりかけていると感じることが多かれ少なかれあります。
しかし自分なりに工夫をし、なんとか妄想を止めることができているのも確かです。
その具体的な方法を5つまとめてみましたので、対人恐怖症から統合失調症にならないためにも参考にしてみください。

1. 目の前のことを行う

人前でも目の前に集中する

まず妄想をし始めてしまう前に、目の前のことだけを行うよう普段から心がけましょう。
勉強、仕事、趣味など、いま自分が行っていることのみに意識をそそぎます。

妄想は思考に隙(すき)が出来たときに生じるものです。
目の前のことに意識を向けていないから、つい考えごとをしてしまうんですよね(あとで妄想にハッと気がついて目の前の作業に意識を戻すときってありますよね)。

この方法を実践する際は、自律訓練法と組み合わせて行うと良いかと思います。
自分の身体に意識を向けるトレーニングを繰り返し、集中力と自身のコントロール力を高めていきましょう。

2. ストレスを受け流す

身の回りのストレスを受け流すことも大切です。
嫌な・不快な出来事をそのまま受け取ってしまったときから妄想は始まります。

たとえば自己視線恐怖症なら、視線の先にいる人がなんらかの反応をみせても何も考えず受け流しましょう。
脇見恐怖症の場合は隣にいる人がなにかのリアクションを示しても、ただただ受け流します。

相手の反応を自然現象のように考えると効果的です。
ときおり風が吹いたり雨が降ったりするのと同じく、そこには何の意味もないと自分自身に言い聞かせましょう。

3. 妄想の中毒性に気づく

とはいえ、対人恐怖症の渦中では「目の前のことを行う」「ストレスを受け流す」といった方法は難しくもありますね。
そこでおすすめしたいのが、妄想し始めたらその中毒性に気づくという方法です。

わたしの経験(脇見恐怖症から咳・咳払い恐怖症にまで悪化)をふまえると、妄想は癖になればなるほど大きくなってしまうものだと感じています。
思い込みを深めれば深めるほど妄想の枝葉は広がっていき、統合失調症を発症しやすい状態に近づいてしまうのです。

自分で自分を苦しめることはありません。
妄想してしまったと気づいたら、その中毒性・恐ろしさを自分に気づかせてあげましょう。

4. 時間を大切にする

もうひとつの方法としては、妄想が始まったら「時間がもったいない」と考えることも有効です。
時間を大切にし、妄想している時間を目の前のことに使います。

自分の症状にとって嫌な出来事に直面したとき、それにとらわれ続けるのはもっと嫌だと思いませんか。
人生の貴重な時間を不快なことのために浪費したくないですよね。

つい妄想してしまったら、「あやうく時間を無駄にするところだった」と思い直しましょう。
わざわざ自分のほうから苦しみに身を投じる必要はないのです。

5. 孤独にならない

これまで紹介した方法とは少し違うアプローチになりますが、孤独にならないことも重要だと感じています。
自分ひとりでいると内に閉じこもりやすく、妄想の悪循環に入りがちだからです。

同じ対人恐怖症者どうしで仲良くすると悪化する恐れもあるので、できれば健常者と交流するようにしましょう。
彼ら彼女らの健全な考え方に触れているうちに、少しずつ自分の妄想癖が治まっていきます。

ときには自分の考えを否定されて再び孤独の殻に閉じこもりたくなったりしますが、そこで逃げないほうが吉です。
「そういう考え方もあるな」と相手を受け入れることで、柔軟に物事をみられるようになっていきます。

妄想癖を治すには、まず妄想が始まらない土台を作ること。
そして妄想の苦しさを自覚すること、ひとりで考え込まないことです。

以上の5つの方法を実践すれば、対人恐怖症から統合失調症になりかけても慢性化・悪化は防げるでしょう。