「対人恐怖症は甘え」「視線恐怖症も甘え」。
こんな言葉をネットでみたり人に言われたり、そして自問自答をしたりすることがありますね。

こうした言葉は半分正解だと思っています。
対人恐怖症(視線恐怖症)という病気そのものに「甘え」の要素はありませんが、そうした言葉が「甘え病」や「わがまま病」のことを指しているなら当たっているでしょう。

対人恐怖症は病気であり甘えではない

対人恐怖症には症状として視線恐怖症などがありますが、「人に甘える」という症状はありません。
なので対人恐怖症そのものは「甘え」とはいえないでしょう。

対人恐怖症は、その患者本人にとっては大変に苦しい病気です。
健常者が普通にできることができないから「甘え」といわれるんでしょうが、なまけているわけでは決してないですよね。
やりたくてもやれないんです。

そして対人恐怖心から日常生活に支障が出てくると、誰かに頼りたくなります。
買い物を代行してもらったり、目的地に送迎してもらったりといった具合にです。
これらを「甘え」といわれてしまうのなら、日本社会を残念に感じます。

健常者だって困ったときは誰かの助けを借りたくなるのではないでしょうか。
風邪で寝込んでいるときは、家族に薬を買ってきてと頼みたくなるはずです。
足の骨を折ったときも、車で駅まで送ってほしくなります。

困って助けを求めるのは「甘え」ではなく、人として普通の行動です。
誰かに頼る理由が対人恐怖症であってもおかしなことではありません。
日常生活が満足にできていない状態ならなおさらです。

「甘え病」になると話は別

引きこもりのリス

しかし対人恐怖症や視線恐怖症を理由として誰かに頼るのが当たり前になると、話は別になります。
甘える癖がついてしまい、いつも誰かに助けてもらうことばかりを考えるようになるからです。

「甘え病」とでも表現しましょうか。
こうした状態になると「対人恐怖症は甘え」などといわれても仕方がないでしょう。

わたしは実家での療養中そんな感じでした。
「子どもが対人恐怖症になってしまったのは親の責任。その責任を償うため親は自分のために何でもやってあげるべき」とすら思っていたものです。
気づけば、自分でできることや以前はできたことまで親に頼っていました(近所のポストへの投函すらも…)。

このように甘え病になってしまうと、対人恐怖症とは関係なく人を頼る癖がついてしまいます。
やりたくないこと、面倒なことがあれば対人恐怖症と無理やり関連づけて言い訳ばかりをするようになってしまうんです。

「対人恐怖症患者は甘え者」といったほうが正しいかもしれませんね。

「わがまま病」に悪化することも

甘え病は「わがまま病」に悪化してしまうこともあります。
甘える癖が付いてしまうと、どんどんエスカレートして理不尽な要求までするようになるわけです。
こうなってしまうとただの自分勝手で、相手にとっては迷惑でしかありません。

わたしも自宅療養生活の最後のころは、両親にわがままばかりを言っていた気がします。
家事も仕事もせずに自分の要求だけをひたすら主張していました。
アカシジアになったこともあり「こんなつらい目にあったんだから(親に)守られて当然」という考えが根底にあったんでしょう。

もはや対人恐怖症うんぬんの話ではないですね。
ただのわがままです。
母親に愛想をつかされたり父親と口論になったりしたのも、そうしたわたしの態度が迷惑だったからだと思います。

あのときのわたしに対して「対人恐怖症は甘え」といわれても、いまは返す言葉がありません。
当時はわがままだったので屁理屈をこねたでしょうけれど(苦笑)。

甘え病やわがまま病にならないためには

対人恐怖症・視線恐怖症を理由として人に頼るのは悪いことではないですが、甘え病やわがまま病になるのは避けるべきです。
甘え病になったら自立がいつまでもできず、頼っている相手がいなくなったときに生活が困難になるでしょう。
わがまま病についても、要求がエスカレートしていき事件沙汰になる恐れもあります(引きこもりの家庭内暴力など)。

甘え者になったりわがままになったりしないためには、相手に感謝の気持ちを持つことが大切です。
対人恐怖症だから助けてもらって当然と思わないことです。

世の中には、病気になっても誰の援助も受けられない人がたくさんいます(ホームレスには精神病患者が多いと聞きます)。
頼れる人がいるのは、とてもありがたいことなんです。

だから「ありがとう」という気持ちを持ってみてください。
できれば言葉に出して感謝を伝えたほうが、感謝の自覚が強くなりますし相手もうれしい気分になります。

そして感謝する癖がつけば、なんでもかんでも相手に頼りづらくなるものです。
「いつも申し訳ないな」という気分になってきます。
そうなれば、自力でできることは自分でやろう、昔できたことも自分でやってみようという気持ちも強まるでしょう。
対人恐怖症を言い訳にして誰かに甘えたり、わがままを言ったりしなくなるはずです。

対人恐怖症そのものは病気であり、甘えではありません。
ただ症状を言い訳にして人に頼る癖がついてしまうと、甘え病やわがまま病になってしまいます。

自立するためにも人に迷惑をかけないためにも、相手に助けてもらったら感謝することを忘れないでおきたいですね。