視線恐怖症を抱えていると、日常生活のいろいろな場面でつらい・苦しい思いをしますよね。
当記事では、そうした視線恐怖症者が苦手とする場面(シチュエーション)での対処法をご紹介します。
わたしが長年にわたって視線恐怖症に悩むなかで編み出した方法です。

ただし、これらの対処法を強迫的に実践するのは絶対に止めてください。
「こういうときはこうしなければならない」と思い込んでしまうと強迫観念が生まれて余計に症状が悪化してしまうかもしれません。

また、対処法を実践したからといって視線恐怖症が完全に治るわけでもないです。
あくまで視線恐怖症の症状をやわらげる対処療法的なものと考えてもらえればと思います。
(視線恐怖症を緩和する基本的な対策についての記事も参考にどうぞ。)

対処法その1. 道・通路

道・街路や施設の通路などを歩いていて人とすれ違うときは、前方の景色全体を見るように歩くと良いでしょう。
前方からやってくる人に焦点をあてるのではなく、あくまで景色の一部と考えます。

ただどうしても相手が気になってしまうときがありますし、向こうから視線を感じるときもありますよね。
そんなときは見ながらすれ違って良いです。
「見てはいけない」と思うと余計に相手をガン見してしまうものなので、最初から「見てもいい」と思ってすれ違いましょう。

とはいえこちらが視線を向けると相手と目が合う場合があります。
その場合は、ほほえむのがベストな対処法です。

目の力を抜いてわずかに口角を上げれば、すれ違いざまに舌打ちされたり咳払いされることはないでしょう。
難しいなら軽く会釈をするだけでも十分だと思います。
少なくとも悪い印象は相手に与えないので、気まずい雰囲気になりません。

すれ違いざまに下を向くという定番の対処法もアリですが、だからといってずっと下を向いて歩くのは通行人に不審がられるので逆効果です。
変な目でみられたり不快感を示されたり、運悪く警察官に職務質問をされたりもします(わたしも経験があります汗)。

そもそも事故に遭ってしまう危険がありますしね。
歩きスマホや歩きながらの読書は言わずもがなです。

また他者視線恐怖症のせいで自分の後方を歩く人が気になるときも、やはり前方の景色を見渡し続けましょう。
脇見恐怖症になると曲がり角でも後方からの視線が気になったりしますが、その際も曲がった先のほうを見渡しながら曲がります。
「ヒトは前を向いて歩く生き物」と自分に言い聞かせながら歩くのがコツです。

道路で車や自転車とすれ違う場合も、基本的には同じ対処法になります。
通り過ぎる車(自転車)は景色の一部分として見て、それでも気になるときは普通に見れば良いんです。

もしドライバーなどと目が合った際は、ほほえんで歩いていると悪い印象を与えませんし自分の気持ちも晴れやかになったりしますよ。
後方から通り過ぎる車・自転車が気になるときは前方を見つづけましょう。

横断歩道をわたるときも信号停止中の車が気になりますが、それらを景色のひとつと考えます。
車内のドライバーのほうには意識を向けず、車全体をみながら歩く感じです。
ドライバーの視線から逃げるように走ってわたるのは危険なので避けるべきですね。

横断歩道の向かい側に立っている人や自転車が気になる場合も、やはり景色とみなしましょう。
その人にばかり意識を集中させず、周囲の景色全体を見ます。
視線恐怖がやわらぐだけでなく、交通安全という意味でも効果的です。

対処法その2. 車

車の運転席

車を運転しているときも、歩行時と同じく前方の景色全体を見るように運転すると症状がやわらぐかもしれません。
自己視線恐怖症だと前方の車、他者視線恐怖症や脇見恐怖症だと隣の席や後部座席が気になりますが、そこに意識を置きすぎず目の前の道路状況の把握に努めましょう。
事故防止のためには当たり前の行為ですが、視線恐怖症のわたしは運転中に何度も自分に言い聞かせています。

前方を見わたす際は、目をキョロキョロさせず目を固定したまま視野だけを広げるイメージです。
キョロキョロしながらの運転だと注意が一点一点に集中しすぎてしまって危ないですし、同乗者を何度もチラ見してしまいます。

また前方に車が走っていて自己視線恐怖症でつらいときは、音楽やラジオを聞きながら運転すると前方車を意識しすぎることが減って良い感じです。
車間距離を多めに空けて走るのも気分が楽になります(追突事故予防にもなりますし)。

信号待ちのときは接近せざるを得ませんので、別のことを考えたり景色を見たりするのはアリでしょう。
ただあまり別のことに意識を向けると事故の恐れがあるので、やはり音楽をBGMにしながら前方に意識を向け続けるのが一番の方法です。

いっぽう誰かが運転する車に乗るときは、助手席なら風景を見るようにしています。
寝たふりは運転手に失礼になることがありますし、スマホや読書は脇見恐怖症的にしんどいですからね。

後部座席なら寝たふりでもスマホでも何でもできます。
もちろん運転手やほかの同乗者との会話を楽しむのも良いですよ。

対処法その3. 電車

電車での視線恐怖症対処法は、まず座って寝たふりです。
これは鉄板でしょう(汗)。
あとは車での対処法と同じく、音楽を聞くのも定番ですね。

座れない場合は、都会の普通電車ならまず優先席ちかくの場所に立つことです。
車内の端っこのほうにいれば「見られている」と妄想しにくい気がします。
自己視線恐怖症や正視恐怖症の人も、乗降客の多いドア付近に立つよりマシでしょう。

優先席に座っている人が目下に見えて気になるので、何か考えごとをするのが良いです。
景色を見るのも有効ですが通勤や通学などで毎日おなじ景色だと飽きるので、考えながら景色をボーッと見る感じで。

逆に人間観察してみるのもアリだと思います。
いろんな人がいるなとわかって(自分だけが変じゃないとわかって)意外と症状がやわらいだりするものです。

田舎の普通電車ならドア付近に立つのがベターでしょう。
優先席エリアはボックス席になってしまっていますからね(汗)。
田舎なら乗降客が少ないので、ドア付近に立っていても都会ほど苦痛ではありません。

また、都会ならあえて混雑時の電車に乗るのも対処法のひとつです。
満員電車のほうが人の壁が自分のまわりにできるので逆に落ち着いたりするんですよ。
すぐ近くに人がいるので脇見恐怖症的には少しつらいですが、他者視線恐怖的なつらさは人の壁によって軽減される気がします。

逆に田舎なら始発付近の電車がおすすめです。
人がほとんど乗っていませんし、途中駅でもあまり乗ってきませんので。

ちなみに特急電車のほうが個人的にはしんどいです。
隣の席の人には脇見恐怖症、うしろの席には他者視線恐怖症、前の席には自己視線恐怖症がそれぞれ発動してしまい、音楽を聞きながら目をつむっているか寝たふりしか対処のしようがありません。
席が固定だから余計つらいんでしょうか…。

対処法その4. バス

バスでの対処法も基本的には、座りながら寝たふり(音楽を聞きながら)です。
座席が電車のように対面式ではないので、視線をいろんな方向から感じにくく電車より寝やすいと思います。

寝ずに窓の外の景色をみるのも電車にくらべれば気楽でしょう。
うしろから見られている気がするくらいです。

バスの場合、一番うしろの座席はあまりおすすめできません。
バス内の人の様子が丸見えで自己視線恐怖症的につらいからです。
バスでは構造上うしろにいくほど席の位置が高くなっているので、一番うしろの席だと運転手やほかの乗客を監視している気分になってしまいます。

意外と真ん中あたりの座席がマシです。
席が平坦に並んでいるので目立ちにくく、車内風景のなかに溶け込みやすい気がします。

前のほうの座席はもちろんおすすめしません。
運転手の挙動が気になってしまい、やはり自己視線恐怖に苦しんでしまうことでしょう。

立ったままの乗車も避けたほうが良いです。
バスの座席はすべて前を向いた形になっているので、車内で立っていると乗客の視線を感じてしまいます。

ただ混雑時で車内が人でいっぱいという状況なら、立ったままのほうが効果的です。
電車での対処法と同じく、人の壁が車内の視線をある程度さえぎってくれるでしょう。
逆に座るのは避けたほうが良いと考えています。
ほかの乗客に座席の横へ立たれるのは、他者視線恐怖症や脇見恐怖症の人にとって苦痛ですからね。

対処法その5. 学校・会社

学校やデスクワーク(事務・パソコン作業)中心の会社では、残念ながら対処法をみつけるのがなかなか難しいです。
とはいえ、いくつかのアイディアはあるので紹介してみます。

まず席替えをお願いしてみることです。
症状的に楽になりそうな席に移動できないか、先生や上司に相談をしてみましょう。

わたしも高校3年生の後半になって数回、席替えで一番うしろの席にしてもらったことがあります。
お願いするときの理由を正直に話すべきか悩んだ結果、視線恐怖症について話しても通じないと思ったので「うしろに人がいると授業に集中できない」という理由にしました。
症状がわからない人からすればわがままな要望でしょうが、わたしの表情がよほど深刻だったのか、すんなりOKをもらえましたよ(苦笑)。

脇見恐怖症の方には、机の上に目隠しを作るという方法もおすすめです。
教科書や書類を山積みにして、自分の視界をせまくするわけです。

会社なら視線恐怖症でなくても山積みにしている人は職場によくいるので気軽に実践できると思います。
学校だとちょっと周囲の目が気になるかもしれませんね…。
でもどうせ隣の人が気になるなら思い切って試してみても良いでしょう。

学生なら寝たふりもアリかもしれません。
ただ先生への印象は悪いですし、勉強がおろそかになってしまいます。
とくに受験生の場合は時間が貴重なので、眠くないのに寝ているのはとてもモッタイナイです。

わたしは高校生のころ授業中は寝たふりをして自宅で必死に勉強していましたが、結果として余暇時間が減り余計にストレスがたまった気がします。
(そのせいで心の状態が不安定になり、脇見恐怖症などの諸症状を悪化させたのではと考えています。)

また、授業での発表や会議でのプレゼンの際は、聞き手の一人ひとりの顔を見ながら話しましょう。
ジッと見つめるのではなく、話しかけるイメージです。
視線を人のいないほうに向けたり、同じ方向をずっと見ていたりしてはいけません。
「見られている」「見てしまった」などとは考えず、聞き手と会話する姿勢を心がけます。

対処法その6. 買い物店(スーパー・コンビニなど)

スーパーやコンビニなどのお店の場合は、買い物という目的の達成を第一に考えることが有効です。
視線恐怖症でつらさや苦しさを感じても、それにとらわれず買い物へ意識を戻すことに集中します。

「何を買おうか」
「あの商品はどこにあったっけ」
と考えながら店内をまわれば、他人の視線を気にしすぎる頻度は下がるでしょう。

買い物を早く終わらせればそのぶんだけ早く苦痛から解放されるので、わたしは「症状で悩んでいる暇はない」くらいの気持ちでいます。
まわりを気にしてばかりいると挙動不審になって店員に万引き犯と疑われたりするので、この意味でもできるだけ買い物に集中すべしです(汗)。

そのほかの対処法としては、レジでの会計時にはクレジットカードをおすすめします。
現金だと財布から取り出すのに時間がかかり、店員やまわりの視線が気になりがちですからね。

スーパーではレジかごバッグも使っています。
会計後の袋詰め作業がいらなくなるので、他者視線恐怖症・脇見恐怖症的の人には役立つグッズです。
いままでレジに並んでいる客や隣で袋詰めをしている客の視線が気になっていたんですが、その苦痛がなくなりました。

対処法その7. 飲食店

飲食店での視線恐怖症対処法は、なによりも食事を楽しむことです。
目の前の料理や、一緒にいる家族、恋人、友人などとの会話に意識を向けると良いでしょう。

症状に悩んでばかりいると自分自身が食事に集中できないだけでなく、暗い表情にもなりがちなので周囲の客に注目されやすくなってしまいます。
「あの人どうしたんだろう…?」と見られやすくなるわけです。
一緒に食事をとっている相手から不審な目でみられることもあります(とくに関係の浅い知人などの場合)。

昔カフェで症状がつらくて黙りこくっていたとき、隣の席の女子大生らしきグループがチラチラわたしのほうを不思議そうに見ていました。
そうなると余計に症状が悪化して悪循環です。
飲食店ではだいたいの人が楽しんで(リラックスして)食事をとっているので、場の雰囲気に合わせて自分も楽しんだほうが目立ちません。

また、座席の位置にもこだわったほうが良いです。
ほかの客席に背を向けるより壁側に背を向けて座ったほうが安心でしょう。

入店時に苦手な席へ案内されそうになったら、思い切って変えてもらうと良いかもしれません。
カウンター席だけの飲食店の場合はどうしようもないですが(汗)。
その際は食事を誘ってきた相手に、行くお店を変えてもらうようお願いするしかないですね。

対処法その8. カラオケ店

カラオケ店での対処法も、飲食店と同じく「楽しむこと」が基本になります。
視線恐怖症がつらくて「楽しめない」と思ってしまいがちですが、「楽しもう」と考えることが大切です。
ひとりだけテンションが低めだと余計に目立ってしまいますから。

脇見恐怖症的には、歌っているとき画面の歌詞を読むのがつらいですよね。
そんなときわたしは心をこめて歌うようにしています。
するとなぜか歌詞に集中できるようになったりするんです。

歌手になりきるのもなかなか効果的だと思っていて、やはり歌うことに身が入るので集中しやすくなります。
心をこめたり、なりきって歌ったりすれば場が盛り上がりますし、よりカラオケを楽しめるでしょう。

ほかの人が歌っているときも歌詞を読むのが苦痛になったりしますね。
そういった場合も、「どんな歌なのかな」と真剣に歌詞を読んだり映像を見たりしていると症状が気にならなかったりします。
歌の世界観に入り込む感じです。

この方法が無理なら、ほかの人が歌っているときは選曲端末を見たりほかの人と話すなりしてやり過ごしましょう。
トイレに何回も行くのはおかしいですが、みんなのドリンクのお代わりをもってきてあげるのは良い方法だと思います(ほかの客や店員の目は気になりますが一瞬です)。

対処法その9. 映画館

映画館ならまず、一番うしろの列が鉄板ですね。
脇見恐怖症なら、さらにその列でも真ん中の座席がおすすめです。
うしろの列でも端のほうだとスクリーンを斜めから見ることになり、視界に人が入ってしまいます。

映画館の席はネットで予約したほうが確実です。
いちばん空いている平日の昼から夕方くらいの時間帯を狙うと良いでしょう。
休日ならその日の最初の上映時間帯です。

あとは映画が始まったら、飲食店カラオケと同様に全力で楽しみます。
私見ですが視線恐怖症で悩む方は感受性が高いので、ストーリーに入り込みやすいはずです。
わたし自身、気づけばスクリーンに夢中になっている瞬間が結構あります。

以上、視線恐怖症の対処法を9パターンまとめてみました。
ただ、こうした苦手な各場面に出くわしたら必ず対処するのではなく、体を慣れされることも大切という気もしています。
対処法をとりながら苦手意識を小さくしていけば、視線恐怖症が改善に向かうのではないでしょうか。

なお家で勉強したり働いたり、ネット通販を使ったりするのが視線恐怖症的にいちばん楽なのは間違いありません。
それでも外で用事を済ませなければいけないときはありますので、そういったときのための対処法のご紹介でした。