視線恐怖症(脇見恐怖症など)をはじめとした対人恐怖症になると、自分以外の人の咳や咳払いを頻繁に聞くようになりますよね。
わたしも視線恐怖症が悪化していくにつれ咳(咳払い)をよく耳にするようになり、咳・咳払い恐怖症にまでなってしまいました。
頻度でいうと電車やバスでは必ず何度も聞かされますし、ひどいときはコンビニに数分たちよっただけでも数回は聞こえたりします。

なぜ視線恐怖症・対人恐怖症になると、これほどまで人の咳・咳払いを耳にしなければならないのでしょうか。
はっきりした答えはわかっていませんが、その原因は4つあると考えています。

1. 過剰意識

人への過剰な意識

ひとつめは、人に対する過剰な意識です。
これが最大の原因であり、以下に紹介するそのほかの原因の根本要因でもあります。
人を過剰に意識するからこそ人への視線・目つきがおかしくなり、緊張感を抱くのでしょう。

「過剰」という点がキーポイントです。
視線恐怖症者(対人恐怖症者)は、人に恐怖心や警戒心を持っているがために、必要以上に人を意識してしまいます。
健常者も日常のさまざまな場面で人に意識を向けるでしょうが、その程度は視線・対人恐怖症者ほどではありません。

わたし自身、人の存在を意識した瞬間、自分の心理状態が切り替わるのがわかります。
頭の中でその人がずっと居続けているような感覚になるのです。

こうした過剰意識が続くと、遅かれ早かれその人の咳・咳払いを聞くことが多いと実感しています。
それは前述のとおり、人への過剰な意識によって自分の視線や目つきが変になったり、異常に緊張したりするからですね。

ちなみに人を過剰に意識する癖がなかったころ(脇見恐怖症を発症した高校生時代以前)は、人の咳や咳払いをほとんど耳にしませんでした。
わたしは昔から小さな音にさえ敏感なので、単純に忘れているわけではないでしょう。
やはり人への過剰意識があるかどうかで、咳・咳払いを聞く頻度は変わるはずです。

2. 視線・目つき

人に対して自分の「視線・目つき」がおかしくなると、結構な確率(10パーセント以上)で相手は咳や咳払いをします。
おそらくその人が不快感を抱くからかもしれません。

たとえば道で人が自分の前方を歩いているとき、その人が曲がり角を曲がる際に咳(または咳払い)をすることがあります。
わたしの視線に嫌悪感・警戒心を抱き、「見てるんじゃないよ」という意味でそのような行為に出たのかもしれません。

また道で人が前方から歩いてくるとき、わたしが目の置き所に迷うとその相手が咳(咳払い)をすることもあります。
わたしの目つきが怪しかったことに不快感を抱き、憂さ晴らしのようにそうしたのかもしれません。

そのほか、脇見恐怖症者がよくやりがちなチラ見が原因で咳・咳払いされることも多いです。
わたしの場合、隣(真横)に人がいる状態では結構な頻度でそのような目に遭います。

逆にわたしが健常者だったころ、そのような反応をしてしまうこともありました。
中学時代の授業中、隣の席の女子がこちらをにらむような目つきで何度もチラ見してきたので、わたしは「見てくんなよウザい!」という気持ちからわざと咳払いをしてしまったのです。
いま思えば彼女はすでに視線恐怖症だったのかもしれませんが、当時のわたしはそんな病気を知らず、ただただ不快でそうした反応をしたのでした。

身の回りに視線・目つきのおかしな人間がいると咳・咳払いをしたくなる人は、昔のわたしも含め一定数いる気がしています。
視線恐怖症の存在やその患者の苦しみを知らない人からすれば、人間という生き物として防御反応(または威嚇反応)を示しただけであり、ごく自然なことなのでしょう。

3. 緊張感

同じく「緊張感」を異常に抱いているときも、自分の周囲の人が咳や咳払いをすることが多くあります。
自分は視線を送っていない・見ていないのにも関わらずです。
たとえば外食しているときに、自分のうしろの席の人が何度も(むせるように)咳き込んだりします。

人前で話をするとき、咳・咳払いする人っていますよね。
自身の緊張もさることながら、その場の雰囲気が張り詰めているせいもあるでしょう。
緊張すると気道がせまくなり、咳(咳払い)が出やすくなるそうです(参考:『健康カプセル!ゲンキの時間』)。

それと同じで、視線恐怖症や対人恐怖症で緊張していると、その緊張感が伝わり周囲の人の咳(咳払い)を引き起こすのだと思います。
前述の外食の話でいうと、わたしがうしろの席を気にして緊張していたから、それを相手が(無意識に)感じ取って咳き込んだりむせるのかもしれません。
電話のときも、自分の緊張が相手に伝わったせいか咳や咳払いを聞かされることが多々あります。

この説に確信が持てそうなのは、わたしが相手にまったく気づいていないときも同様の現象がよく起こるからです。
たとえば、ひとりで横断歩道の信号待ちをしていると、停止線まで向かってきたバイクや自転車の運転手が咳・咳払いをすることが結構あります。
わたしはその運転手を意識していませんし視界にすら入っていないにも関わらず…です。

また夜に部屋の明かりをつけずにスマホをいじっていたとき、自宅の前の月極駐車場から咳や咳払いが聞こえたりもしました。
わたしは駐車場にやってきた人に気づいていませんでした(外は真っ暗なので気づきようがない)ので、やはり緊張感が原因だと考えられます。
(わたしは雑音恐怖症でもあり、家にいても何か音がしないか緊張してしまうのです。)

そのほか、以前長野県千曲市の城山という山をひとりで登り山腹の休憩所で景色を見ていたとき、後方の坂道から突然「ゴホン!」という男性の大きな咳が聞こえてきてかなり恐怖しました。
おそらく、ひとりで外出したわたしの緊張感が、その男性に伝わり咳を誘発したんでしょう。

4. オーラ

これまで述べた説とくらべると妄想に近いと思っているんですが、オーラも原因のひとつかもしれません。
そう妄想できるのは、自分から遠く離れた相手が咳・咳払いをしたりするからです。

たとえばテレビやラジオの生放送を聞いているとき、出演者がそうした反応を起こします。
SNSでも、わたしがフォローして数日後に、相手がのどの不調を訴えたりするのです。

考えすぎとは思っていますが、わたしが緊張や警戒をしているときにこの現象がよく起きるため、因果関係があるようにも思えてしまいます。
とはいえ相手とわたしは同じ空間には居ませんので、緊張感などが伝わるとは考えにくいでしょう。
前述の電話の例のように相手がわたしの存在をわかっているとも考えられません。

となると、わたしからオーラのようなものが出て、電波や何かを通じて相手の咳(咳払い)を引き起こしているのでしょうか。
スピリチュアルの世界では、咳には浄化作用があるといわれているようです。
遠く離れた相手の咳・咳払いは、わたしから発する負のオーラを払拭するために生じた無意識の拒否反応なのかもしれません。

しかしオーラというものがあるとして、それがテレビ画面の向こうに伝わると考えるのはやはり現実離れし過ぎているようにも感じます。
こうした視点で人の咳・咳払いの原因を究明し続けると、統合失調症が本格化してしまいそうです。

視線恐怖症者・対人恐怖症者が人の咳や咳払いを高頻度で聞かされる原因は、第一に過剰意識だと考えています。
人を過剰に意識するからこそ自分の視線や目つきが気になったり過度に緊張してしまい、結果として咳・咳払いに遭遇するわけです。