わたしは対人恐怖症(精神障害のようなもの)でありながら健常者の妻と結婚し、今年で丸2年が経ちます。
そこで、これまでの結婚生活を通じて感じたメリットやデメリットをまとめてみました。
「2年」という期間は短いですが、将来的に子どもを作ることになるかもしれませんので今のうちに夫婦のみの生活についての感想を書き残しておきます。

毎日がリハビリになる

メリットよりデメリットが多い

対人恐怖症のわたしにとって、結婚生活は毎日リハビリしているのと同じです。
たとえば食事中は妻の視線を気にしながら食べ続けなければならないため、視線恐怖症のリハビリになります。
また、妻の咳や咳払いを聞くたびに咳・咳払い恐怖症のリハビリになっている気もしなくもありません。

そもそも引きこもって長年ひとり暮らをしていた身からすれば、同じ空間にいる人の存在を感じながら暮らすだけでも十分なリハビリです。
結婚した当初は妻が家にいるだけで多少なりとも緊張していましたが、だんだんと妻の存在感に慣れてきました。
それだけでなく「自分は人と一緒に居続けていいんだ」という感覚が戻ってきたようにも感じます。
この感覚は対人恐怖心を小さくするうえで重要です(「その場から逃げようとしない」)。

そのほか妻はわたしのメンタルが不安定なときでも外出を無理やり誘ってきたりしますが、それも悪いことばかりではないと考えています。
ひとりで暮らしていたころのように対人恐怖症を言い訳にしてリハビリの機会を失うことが減ったからです。
人がこわくても思い切って外出してみると、帰宅したころには達成感に包まれたり自信が湧いてくることも少なくありません。

妻以外の人と接する機会も増えました。
妻の両親に定期的に顔を見せたり、妻の知人と偶然にも交流したりするのは対人恐怖症者にとって良いリハビリでしょう。
そのおかげか最近ではわたしも実家へ頻繁に帰省したり学生時代の旧友とたまに遊ぶようになり、少しずつ社交性を取り戻しつつあります。

真人間に近づける

健常者である妻との結婚生活で得た心理的メリットは対人恐怖症のリハビリだけではありません。
彼女との暮らしを続けていくにつれ、真人間(まにんげん。「まともな人」の意)に近づいていると感じています。

独身時代は対人恐怖症が悪化し続け、変人・奇人のような生き方でした。
人目を避けるため部屋に引きこもって昼夜逆転の生活を送り、家族や友人との交流すら可能な限り避けていたのです。
やがて社会をうがった目で見る癖も強くなり、テレビやラジオの視聴はおろかネットニュースを見るのも嫌になるほど世間を避けていました。

そんなわたしが、いまはだいぶまともに生きているように思います。
規則正しい生活をおくり、必要な用事があるときは(嫌々でも)外出をし、家族・友人を避けてもいません。
世の中を敵対視することも減り、テレビを見たりすることが苦痛でなくなりました。

このように変化したのは、やはり妻と一緒に暮らしてきて彼女の健常者らしい生き方を間近で見ているからでしょう。
人目におびえることなく平日は毎日きちんと職場に通い、休日は買い物などに出かけ、職場やプライベートの人間関係をないがしろにもしない。
そのような彼女の暮らしぶりをみていると、自分も普通の人間に戻らなくてはという気分にさせられるのです。

性格も改善してきたように思います。
昔はひねくれた思考パターンをしていましたが、少しずつ素直な考え方に変わってきました。
これも妻が基本的に人を信じ、みずからも人を裏切らない生き方をしていることが影響しているためでしょう。

身体面も健康になる

以上のような精神面だけでなく、身体面でも結婚生活のメリットは大きいです。
独身時代より健康になったのは間違いありません。

わたしは先日30代にしてCKD(慢性腎臓病)と診断されましたが、そうなったのは引きこもり時代の不摂生のせいだと考えています。
朝食は菓子パン、昼食はカップラーメン、夕食は冷凍食品という不健康きわまりない加工品まみれの生活を送っていました。
しかも運動もろくに行わず、ほとんど椅子に座って在宅の仕事や趣味の動画鑑賞をしていたありさまです。
CKDは塩分の摂りすぎや運動不足による動脈硬化が原因ともいわれていますので、おそらくこうした生活習慣が引き金になったんでしょうね。

妻と暮らすようになってからは、CKDの経過が順調です。
彼女に塩分ひかえめの料理を作ってもらっているおかげだと思います。
また運動不足解消のためわたしは週に3・4回ウォーキングをしていますが、外出の苦手なわたしが継続できているのは週に1・2回ほど彼女も一緒に歩いてくれているからです。
結婚していなかったら、食事療法も運動療法も満足にできなかったでしょう。

金銭面で安心感がある

妻も働いている身であるため、金銭面での安心感もわたしにとって大きなメリットです。
独身のころは自分ひとりで収入を維持するために必死でしたが、その焦燥感が現在はありません。

わたしは対人恐怖症だけでなく雑音恐怖症にもなっているので、住宅街の静かな家の中で仕事をしていてもささいな音が気になり集中できなかったりします。
そうしたハンディキャップを抱えながらもあせらず働けるようになったのは、妻もお金を稼いでくれているからです。
万が一わたしの収入がゼロになっても生きていけるだろうという安心感があります(もちろんそうならないよう努力はしていますが)。

社会的信用が高まる

はっきりした確証は持てていませんが、結婚生活を続けていて社会的信用度が高まったように感じることも少なくありません。
たとえば病院やお店にひとりで行った際に、対応してもらったスタッフに妻の存在を明かすと相手が安心したような表情・態度になる場合が多いです。
家のゴミ捨て時などに近所の人と出くわした際も、ひとり暮らしのころにくらべて相手がフレンドリーであるように感じます。

わたしの思い込みとも考えられそうですけどね(苦笑)。
結婚して成人男性としての世間体を保てたというか、社会に対する恥ずかしさがなくなっただけの話なのかもしれません(独身の方を否定するつもりはありませんが、わたしには古い価値観が残っているんでしょう…汗)。

対人ストレスが増える

ただひとつ結婚生活のデメリットを挙げるとすれば、対人ストレスが確実に増えるという点です。
どんなに精神不安定でも妻とは基本的に毎日顔を会わせなければなりませんし、外出の付き添いを頼まれて断ってばかりいると夫婦仲が悪くなります。

こうした環境のせいか、結婚してから体重が10キロくらい落ちました(現在は適正体重より5キロくらい少ない状態です)。
健康のため食事の量を減らしたという要因もありますが、それだけではないと思っています。
学生時代も心労で激ヤセした経験があるので、今回もおそらくストレスが原因なのかもしれません。

ひとり暮らしで引きこもっていたころは対人ストレスをあまり感じずに生活できていたものです。
家にいるのは自分だけですし、外出についてもネット通販などを駆使して最小限に抑えられていました。
引きこもり時代の体重がいまより15キロ近く多いのは、ストレスを感じずに生きていた証拠といえるでしょう(苦笑)。

ただ、対人ストレスにさらされる日々を通じて対人恐怖症のリハビリができたり真人間に近づいているのも確かです。
それに体重が減ったといっても、現在のところは健康診断でとくに目立った異常は見つかっていません(CKDも悪化していません)。
これらを踏まえると、対人ストレスが増えることはデメリットと言い切れないとも考えています。

独身のころは「対人恐怖症だから結婚しちゃいけない」と思い込んでいましたが、結婚生活をしばらく続けてみて意外とメリットが多いことに気づけました。
妻と一緒に暮らして感じる対人ストレスもまったくのデメリットというわけではありません。
「結婚して良かった」とは断言できないまでも、「結婚して失敗ではなかった」です。