他者視線恐怖症になったのと同じくらいの時期から発症し始めたのが、雑音恐怖症です。
身の回りの音にビクつくようになり、しだいに不安、敵意や恐怖を覚えるようになっていきました。
雑音恐怖症になったきっかけ
雑音恐怖症のきっかけは、高校3年生のころです。
すでに他者視線恐怖症になっていて、周囲の人の目線が気になっている状況でした。
ある日のこと、いつものように人目を気にしながら授業を受けていると、斜め前のほうで「パタン!」という大きな音がしたんです。
周りの視線を気にしている状態だったので、そのぶんとても驚いたのを覚えています(授業に集中していれば気にならないのでしょうが…)。
なんの音かというと、上履きを床に脱ぎ落とすときの音。
斜め前の席の女子が上履きをパタンパタンと定期的に脱ぎ落としていたわけです。
その音が気になってしょうがなくて、さらに授業に集中できなくなりました。
不規則なタイミングで「パタン!」と音がするので、いちいちビクつきます。
シーンとしている教室内で突然「パタン!」となると体がすくみ、緊張が走るんですよ…。
次いつ音が聞こえるのか不安でたまりませんでした。
この現象は自分の脇見恐怖症が原因かもしれない…などと妄想したりもしていたものです(自分がみているせいで音を出しているんじゃないか…という関係妄想)。
あまりにうるさくてイライラしたので注意したかったんですが、脇見恐怖症発症のときと同様、できませんでした(汗)。
やはり自分のプライドが邪魔をしたからです。
ささいな音を気にするなんておかしい、周りから小心者と思われたくないというこだわりを抱えていました。
我慢した結果、どんどんその音が気になるようになっていきます。
その女子だけでなく、ほかの男子や女子が上履きを脱ぎ落とす音にもビクつくようになりました。
「パタン!」と聞こえるたびに体がこわばり、やはり脇見恐怖症の罪悪感にさいなまれてしまいます。
いっぽうで、その音を出す人に対して敵意を抱くようにもなってしまいました。
受験生だったこともあり、物音にとても敏感になっていたからです。
「パタン音」を出すのは勉強を邪魔するため、嫌がらせなんじゃないかと思えました。
一種の被害妄想ですね。
物音恐怖症の発症
予備校生になってからは、さらに物音に対する敵意を強めることになります。
予備校の寮の自室で勉強しているとき、両隣の部屋の物音や騒音のせいで集中できなかったからです。
ドスドス歩く音、壁に何かがぶつかる音、ドアを思いっきり閉める音など、いろんな物音に悩まされました。
寮長にクレームを言って部屋を変えてもらいましたが、そこでも周りがうるさい…。
もうノイローゼ状態です。
勉強を邪魔されるのが嫌で、ささいな音にも敏感に反応していた気がします。
センター試験前日に上階の足音が騒がしくて眠れなかったときは、「やっぱり邪魔をするためにわざと音を出しているんだ」と強く確信してしまいましたね。
大学生になり一人暮らしを始めてからは、敵意というより恐怖を抱くようになりました。
木造のアパートに住んでしまったのが悪かったんでしょう。
斜め下の階の住人の物音にかなり苦しめられました。
窓や網戸を閉める音、ドアを閉める音が常識はずれに大きいんです。
寝ているときにそれらの音でしょっちゅう目が覚めていました。
こわかったのは、こちらがなにか物音を出すとそれに対抗するかのように斜め下の部屋から大きな物音が聞こえてきたこと。
「静かにしろ」というメッセージや敵意のようなものを感じました。
しだいに監視されているような気がしてしまい、バスン、バタンと大きな音が鳴るたびに恐怖を覚えてしまったわけです。
ちなみにその住人は咳がひどく、わたしは咳・咳払い恐怖症にも苦しまされることになります。
雑音恐怖症の本格的な発症
ここまでは物音恐怖症を発症するまでの話ですが、そのうちいろいろな音に対して不安や恐怖のようなものを感じるようになっていきました。
人の咳、咳払い、くしゃみ、鼻すすりなどが自分への不快感を示すものに思えたり。
トラックのエアブレーキ音(「プシュー」という音)や電車の警笛が自分への当て付けのように思えたり。
カラスの鳴き声や犬の吠え声が自分を威嚇しているかのように思えたりしてしまいます。
日常生活の雑音が自分と何らかの関係があると妄想するようになってしまったわけですね。
それらの雑音の対象が自分のみになっている気がしてこわくなりました。
雑音恐怖症の本格的な発症です。
しかししばらくして、雑音に対する恐怖だけではなく、不快な音を出している人・モノへの敵意も再び抱くようになってしまいました。
どこに引っ越しても周囲の部屋の物音・騒音に悩まされる。
外に出れば、人間の咳や咳払いのオンパレード。
なぜ大人にもなって周りへの配慮ができないんだという怒りでいっぱいになりました。
そうした怒りから、我慢の限界を超えたときはわざと咳や咳払いをやり返していたものです。
自宅に戻ればうるさい上階の天井をつついたり、ほかの住人に対して咳払いで応酬したりもしていました。
ひどいときはカラスや犬に対して両手を広げて威嚇したりと、もう完全な不審者ですね(汗)。
ちなみに発達障害や自閉症には「聴覚過敏」「音過敏」といった症状があるようです。
ストレスが原因で音に敏感になる場合もあるそうなので、もしかしたらわたしも該当しているのかもしれません。
他人の目を気にするあまり周囲の物音・雑音まで気にしてしまうようになる。
そして音がいつするのかという不安を常に抱えてしまう。
…まさに神経症といったところだと思います。
ただわたしの場合、雑音「恐怖」症だけではない感じですね。
視線恐怖症(視線に恐怖を抱く病気)とは違って、人に対して敵意すら抱いてしまいます。
やはり受験生時代の、物音で勉強の邪魔をされたという思い込みが抜けていないからでしょう。
この敵意は、のちに対人恐怖症の発症にもつながっていきます。