対人恐怖症になると、日常生活のさまざまな場面で人がこわくなりますね。
仕事・バイト、学校、買い物や移動中の電車などで「こわい」という感情をよく抱くものです。
以前わたしは実家で療養しながら精神科に通っていたとき、親の車で病院に行くことすら恐怖でした。

こうした対人恐怖症心(「人がこわい」「視線がこわい」「外がこわい」などと感じる気持ち)を克服するにはどうすれば良いのでしょうか。
わたしはまだ完全な克服法を体得できていませんが、対人恐怖症心の落ち着かせ方・抑え方は少しわかってきたようにも思います。
以下の5つの方法は、直に人と接する場面以外(たとえば電話など)でも使えるテクニックです。

1. 「こわい」という感情を認める

まず、「人がこわい」という感情が自分のなかに存在していることを認めます。
たとえば仕事へ行く前に「わたしはいま人がこわくてたまらないんだな」といったように、自分で自分の対人恐怖心を認識するわけです。

現在の自分の心理状態を知ると、気持ちに落ち着きが少しずつ出てきます。
恐怖の対象を明確に断定したことで、漠然とした不安感がなくなるからかもしれません。

逆に、実際には恐怖を感じていながら「こわくない」「こわいと感じるなんて恥ずかしい」のように考えるのは危険でしょう。
恐怖心の表面だけをぬぐいさろうとしている行為であり、心が余計にアンバランスになると思います。

いまの自分はいったい何がこわいのか。
この点をハッキリさせておき、現在の心理状態とそれに対する自分の認識を一致させておくことが大切です。

2. 「出たとこ勝負」で行動する

対人恐怖心

しかし、対人恐怖症心にとらわれ続けてはいけません。
「出たとこ勝負」の精神で、やるべきことに着手します(たとえば職場・学校・病院に行くため玄関のドアを開ける、電車に乗るなど)。

「人がこわい」とばかり考えていると、その対人恐怖心はどんどん大きくなりがちです。
そして行動できなくなり、さらに自信をなくして対人恐怖が強まってしまいます。

こわくても思い切って行動すれば、こうした悪循環は起こりにくいでしょう。
むしろ実際に行動してみて、その恐怖が大きな存在ではないことに気づき、逆に気分が落ち着いたりするものです。

恐怖にふるえて身動きせず、悪い妄想をふくらませてはいけません。
そうなる前に行動し身をもって体験することで、恐怖心の暴走を抑えられます。

3. 警戒心を弱める

ただ、行動しているときでも対人恐怖心はおそらく残り続けているはずです(行動のみで克服できたら苦労しませんね)。
その場合は、自分のなかの警戒心を弱めると恐怖心も落ち着いていく気がします。

わたしたちは仕事中でも買い物中でも人を警戒しすぎるから、ちょっとしたことにも恐怖を感じてしまうのではないでしょうか。
人に対してアンテナを常に強く張っているがために、健常者なら気づかないような人の存在・動作・表情などにいちいち反応してしまいます。

とはいえ対人恐怖心を抱えている状態で、人への警戒心を弱くするのは矛盾しているように思えるかもしれません。
コツは、恐怖心を警戒心に変化させないことだと考えています。

人はこわいけれども、だからといって過度に警戒する必要もない。
こう自分に言い聞かせると、気持ちに安堵感(安心感)が生まれて対人恐怖心がやわらぎやすいです。

4. 目の前の作業に意識を戻す

警戒心を弱めていても恐怖に遭遇するときはあるでしょう(だから仕事や学校に行くのが「やっぱりこわい」と感じてしまうんですよね)。
しかしそこで恐怖にとらわれるのではなく、目の前の作業・物事に意識を戻すことが重要です。

前述のとおり、恐怖はそれにとらわれ続けるほど大きくなっていきます。
消し去ろうと無理にこだわってもなかなか消えないものです。

なので恐怖を目の前にしたら、(心の)視点をそこに留めてはいけません。
自分がいま取り組んでいる作業に視点を移し、恐怖心の増大を抑えます。

そうしているあいだに別の恐怖が現れることも多々あるでしょう。
そのときは、めげずにまた目の前に意識を戻します。
この繰り返しです。

5. その場から逃げようとしない

恐怖に遭遇したら、その場(職場・教室・店内・待合室など)から逃げ出したくもなりますよね。
しかし恐怖は、逃げようとすればするほど追ってくるものでもあります。

対人恐怖心が強まったときは、逆にどっしりと構えておくべしです。
その場にしばらく居座るつもりでいるくらいが良いかもしれません。

逃げたい逃げたい…という気持ちが心をざわつかせ、対人恐怖心を大きくします。
そして逃げるに逃げられない状況だから余計にあせり、心のソワソワが止まらなくなるのです。

開き直った気持ちでいれば、そうした恐怖やソワソワは自然とおさまっていくでしょう。
恐怖のなかに身を置き続けることで、みえてくる平穏があります。

わたしも含め対人恐怖症を克服できていない状態では、対人恐怖心を完全になくせるとは言い切れません。
ただ上記の5つの方法を心がければ、ある程度のレベルまでは恐怖心を抑えられると日々の生活で体感しています。

対人恐怖症者のみなさんが心おだやかに過ごすためのヒントになれば幸いです。
仕事や学校について「辞めたい」「行きたくない」と思うほど深刻に悩んでいる方は、以下の記事もご参考ください。