大学生になり一人暮らしを始めてから監視恐怖症とでもいえるような症状が出るようになりました。
自分の生活が近隣住民に監視されている気がしてしまうのです。
自宅監視恐怖症、または統合失調症でいう注察妄想ともいえるかもしれません。

監視恐怖症のきっかけ

高校生・予備校生時代から他者視線恐怖症になっていて、大学生活を始めるころには他人の視線を気にしすぎる状態になっていました。
そして咳・咳払い恐怖症の発症とあいまって、その病状がエスカレートしていくことになります。
一人暮らしをしているうちに、自室での生活や行動を外部から見られている気になっていったんです。

アパートの床

監視恐怖症になったきっかけは、咳・咳払い恐怖症発症のときと同じく、自室の斜め下の部屋の住人。
その住人がわたしの足音に聞き耳を立て、まるで行動を監視しているかのように咳をしている…。
こんな妄想をしてしまいました。

物音をできるだけ立てないよう生活するようになり、やがて自分の一挙手・一投足すべてが相手に見られている気になっていきます。
最初は気持ち悪さを感じていただけでしたが、なぜここまで監視してくるのかと恐怖を抱くようになりました。

いまでも鮮明に記憶しているのが、ある日の通学時のこと。
わたしが玄関のドアを開けるやいなや、斜め下の住人も玄関から出てきたんです。
しかも最寄り駅までその住人がうしろをついてきます。
「たぶんバイトかなんかの用があって、たまたま外出時間が同じになっただけでしょ」と何度も自分に言い聞かせました。

電車に乗りその住人が見えなくなりホッとしたんですが、乗り換えの駅でまたもその住人に遭遇。
駅内の通路でも微妙な距離を保ちながらうしろをついて来ました。
幸いにもお互い逆方向の電車に乗り換えましたが、ストーキングされた気分になりましたよ…。

もちろん同じアパートの住人とはち合わせをするのはたまにあることでしょうし、わたしの追跡妄想(統合失調症の症状のひとつ)ともいえそうです。
ただ、わたしの場合これまでの事情があったので単純にそう思えません。

それからは外出を監視されているような気がしてしまい、毎日おなじ時間に出かけるのがこわくなりました。
木造のアパートだったので、出かけるときは玄関で物音を立てないよう注意していたものです。
いまもその癖がたまに出てしまい、外出に苦痛を感じてしまいます(自分が外出恐怖症になりかけていたのを抜きにしてもです)。

近隣住民に監視されているという妄想

自分の強迫観念が災いしてか、そのうち自宅アパートのほかの住人はもちろん、自宅アパートを取り囲むほかのアパートや戸建住宅の住人にも監視されていると思い込むまでになりました。

斜め下の住人があんなに監視してくるのだから、ほかの近隣住民たちもわたしの行動を見ているのかもしれない。
または引きこもりがちなわたしを不審者のように思って警戒しているかもしれない。

こうした不安や注察妄想のようなものがどんどん強まっていったんです。
洗濯機を回すとき、水道を使うとき、ベランダで洗濯物を干すとき、外出するとき…いろいろな場面でほかの住民に見られている気がしました。

とくに監視の視線をヒシヒシと感じたのが、玄関のすぐ向かい側にあるアパートに住む老夫婦です。
玄関のドアを開けるとすぐ目の前にそのアパートの窓がある感じで、外出するたびにその老夫婦から見られている気になっていました。

老夫婦に監視されていると思ったのは、夜になってわたしが自室の照明をつけるまで老夫婦が雨戸を締めないからです。
必ずといっていいほど、こちらが照明をつけるまで雨戸を締めません。
薄気味悪さを感じて試しに夜になっても照明をつけずにいると、やはり雨戸を締めないんです。
監視されていると確信しました。

また対人恐怖症を発症し深夜に外出するようなってからは、その雨戸がうっすら開いていたりしました。
雨戸のすき間から覗かれている気分です。
と同時に、「深夜にコソコソと行動するから、その老夫婦はわたしのことを不審に思って警戒しているんだ」とも考えました。

とはいえ対人恐怖症になってしまった以上はどうしても深夜の外出のほうが安心でしたし、監視されるのはやはり嫌です。
そこでわたしは、玄関わきの小窓にダンボールで目張りを設置。
小窓越しに人の姿や部屋の明かりがわからないようにし、その老夫婦に生活を監視されないようにしたわけです。
自分は何をしているんだろうと思いましたが、ようやく心の平穏が訪れました。

しかしこの対応をみてか、その老夫婦は今度は昼間でも雨戸を閉めっぱなしがちになったんです。
以前は2つある窓のどちらも雨戸が開いていたのに、わたしが目張りをすると片方の窓の雨戸は閉まったまま。
またも監視され続けている気分になりました。

しかもその老夫婦が住むアパートの隣の戸建住宅(自宅アパートのすぐ斜めの家)まで目張りを設置したんです。
なぜこうも近隣住民が自分の行動に反応するのだろうとこわくなりました。
やはり監視されているんだと。

また夏場に窓を開けていると、近隣の住宅から咳や咳払いがよく聞こえてくるようにもなりました。
そのころは咳・咳払い恐怖症が慢性化していたので、近隣住民がわたしの存在を不快に感じて咳(咳払い)をしているんだとよく妄想していたものです。

自宅アパートでも、斜め下の住人だけでなく真下の住人にも監視されている気がしていました。
わたしがトイレで用をたしているあいだ、真下から鼻をかむ大きな音が聞こえてくるわけです。
真下の住人は窓を開けているせいでしょうか、ブオーンブオーンという音が静かな住宅地のなかで何度も鳴り響きます。
最初は笑っちゃいましたが、そのうち気味が悪くなってきて、あまりにもトイレのタイミングで鼻をかみ始めるので監視されていると感じるようになりました。

もうこのころは完全に監視恐怖症になっており、外出時に同じアパートの住人と通路ですれ違うだけでも行動を見張られていると妄想していたほどです。

他者視線恐怖症と咳・咳払い恐怖症。
これら2つの病気が悪化した結果、(自宅)監視恐怖症が発症し追跡妄想や注察妄想に悩まされました。
対人恐怖症で外出はできないわ監視恐怖症で自宅にいても落ち着かないわで、八方ふさがりの状態でしたよ…。