わたしは対人恐怖症(脇見恐怖症をはじめとした視線恐怖症咳・咳払い恐怖症など)を抱えており、その症状を治すためにさまざまな本を読んできました。
各書籍のなかには治療のヒントになりうるものも存在し、いまも定期的に繰り返し読んでいます。

対人恐怖症を治すのに役立つ本

そこで当記事では対人恐怖症者であるわたしの視点で、対人恐怖症治療におすすめの本をまとめました。
自分の心理状態によってピンとくる本も変わるため完全なランキング形式ではありませんが、おすすめ度の高い順に紹介しています。

ちなみに以下にで紹介する各書籍はオーディオブックとして聞くことも可能です(森田療法の原点シリーズは除く)。
わたしも基本的にはオーディオブックサービスを利用しています(くわしくは「視線恐怖症・読書恐怖症でも本を楽しめるようになった」という記事をご参考ください)。

森田療法の原典シリーズ

著者:森田正馬
出版:白揚社
著者:森田正馬
出版:白揚社
著者:森田正馬
出版:白揚社
著者:森田正馬
出版:白揚社
著者:森田正馬
出版:白揚社

森田療法といえば、対人恐怖症の治療法として有名ですね。
その創始者である医学博士・森田正馬氏が書いた一連の本です。

対人恐怖症という病気の正体とその治し方について、森田氏の見解がくわしく書かれています。
森田氏が診察した患者の体験談なども多く含まれているので、より身近に森田療法の根本概念に触れることができるでしょう。

昭和初期に書かれたものなので文体が少し読みにくいですが、ここまで対人恐怖症について掘り下げて書いてある本はありません。
何度も読み込めば森田療法のエッセンスがつかめるかと思います。
「あるがまま」「目的本位」という心がけは、対人恐怖症と付き合いながら生きていくための大切な処世術です。

対人恐怖症を治すのに役立つ本

ただ、視線恐怖症または脇見恐怖症のみを治す場合はおそらく参考にならないでしょう。
わたし個人としては、森田療法が視線恐怖症治療にも有効なのか疑問です

なお、当記事の冒頭で触れたとおり森田療法の原点シリーズはオーディオブック化されていないため、わたしは無理やりオーディオブック化して聞いています。
オーディオブック自作の流れについても記事を書きましたので、ご興味のある方はそちらも読んでみてください。

『反応しない練習』

著者:草薙龍瞬
出版:KADOKAWA

心の無駄な反応をできるだけ減らそうという趣旨の本です。

対人恐怖症や視線恐怖症・脇見恐怖症などを発症すると、人のささいな言動について悪い妄想をして自分を追い込んでしまうことが少なくありません。
そうした「反応」をなくすヒントが本書には掲載されています。

たとえば「正しい理解」という概念は認知行動療法ともいえるもので、対人恐怖症のリハビリにも有効です。
また「正しい方向性」を意識する生き方は、対人恐怖のせいで自分の目的や目標をついあきらめてしまうような方にとって参考になるでしょう。
たまに本書のタイトルを思い出すだけでも、「いけない。反応してしまった」「気をつけよう」と反省できますよ。

仏教の僧侶の方が書いた本であり、原始仏教のさまざまな考え方についての説明もわかりやすいです。
わたしはこの本をきっかけに仏教に興味を持ち始めました。

『これも修行のうち。』

著者:草薙龍瞬
出版:KADOKAWA

『反応しない練習』の著者が書いた、無駄に反応しないためのマニュアル本です。

抽象的な説明の多い前著とは違って、心の病の治し方に関する具体的なハウツーが満載となっています。
体の感覚に意識を向ける、自分を客観視する、目の前の作業に集中するといったテーマでまとめられた各ハウツーは、対人恐怖症へのとらわれ(悩みに執着している状態)を克服するヒントにもなるでしょう。

ただ本書の後半で書かれている、やる気についての記述は個人的にはくどかったです。
対人恐怖症になるような方は基本的に欲望・願望が強かったりするので、読まなくて良い部分かもしれません。

『結局は自分のことを何もしらない』

著者:アルボムッレ・スマナサーラ
出版:サンガ

「生きるとは何か」「自分とは何か」「どう生きるべきか」について説いた本ですが、妄想について解説した箇所(中盤あたり)がもっとも参考になります。

対人恐怖症にしても視線恐怖症や脇見恐怖症にしても症状がいつまで経っても改善しないのは、周囲の人や物事を誤って解釈しているからなのではないでしょうか。
本書を読むと、自分を苦しめているのは自分なのだと気づかされるはずです。

また「人生とは苦であり、世の中の人々は苦しみをなくすために動き続けている」という見解もわたしには画期的でした。
人間社会から一歩引いた視座を持つと、人への嫌悪感や敵意が小さくなるように思います。

『怒らないこと 2』

著者:アルボムッレ・スマナサーラ
出版:サンガ

前作『怒らないこと』の内容を仏教の視点でさらに専門的に解説した本です。
わたしは理屈っぽい性格なので、本書のほうが著者の主張を納得しながら読み進められました。

対人恐怖症に限らず精神的な病気になると、ささいなことにも怒りを抱きやすい気がします。
本書ではさまざまな怒りの概念を10種類に分けて説明しており、自分の怒りを客観的かつ冷静に見つめるヒントとなるでしょう。

また冒頭の「人生は苦の連続」との指摘を考えてみれば、怒ること自体が無意味なものに思えてくるはずです。
生きるのに苦しみは付き物なのだから、それにいちいち怒りの炎を燃やして自分をさらに苦しめる必要はありません。

『イヤな気持ちは3秒で消せる!』

著者:西田一見
出版:現代書林

脳科学の観点で、妄想やネガティブ思考を断ち切るテクニックを教えてくれる本です。

嫌な場面に遭遇したときの脳のメカニズムについての説明も有益でした。
「こんなふうに脳が働いて嫌な感情が芽生えるんだな」とわかっただけでも、自分の症状を客観的に見られるようになります。

ただ、肝心のテクニック(妄想癖の治し方)を実践するのは簡単なことではありません。
わずか数秒のあいだに実行しなければならないので、かなりの修練が必要でしょう。

『寝る前に読むだけでイヤな気持ちが消える心の法則26』

森田療法の関連書籍や仏教書は読みにくい…という方におすすめの本です。
とらわれないことや目的に向かい続けることの大切さを、わかりやすい文体で説いてくれている気がします。

本書を読んでいて「そんな単純なものではない」と腹が立つこともあるかもしれません(わたしも最初そうでした)。
しかし頑固に考えがちな対人恐怖症者にとっては、著者のようなゆるい思想の生き方も大切なのではないでしょうか。

わたしは神経質であるいっぽうお調子者の性格でもあるため、本書のノリは意外と合っています。
なかでも 「よーいドンの法則」「精子のレース」の話は好きです。

『引き寄せの法則(原典完訳)』

著者:ウィリアム・ウォーカー・アトキンソン
出版:パンローリング

現代では「引き寄せの法則」という言葉が一般化しており多数の関連書が出版されていますが、わたしが良いと感じたのはこの本です。
100ページほどの書籍でありながら、引き寄せ(自分の感情に近い人や物事を引き寄せる現象)の全体像がわかります。

心の病を抱えているとネガティブになりがちですが、本書を読めば多少でも前向きになれるでしょう。
「できるし、やる。」という言葉と、最後の「わたしは信ずる」から始まるメッセージの数々が生きるエネルギーをもたらしてくれます。

ただ、恐怖を取り除くという本書のアドバイスは対人恐怖症を治す際には向かないかもしれません。
対人恐怖症は神経症の一種であるため、恐怖を克服しようともがくほど症状が悪化する恐れもあるからです。

『思いと結果の法則』

著者:ジェームズ・アレン
出版:パンローリング

前述の『引き寄せの法則』や、ナポレオン・ヒルの『思考は現実化する』の原典ともいわれている本です。
自分の身の回りで起きる出来事はすべて自分の内から生じたものであると説いています。

対人恐怖症でつらい毎日を送っていると、そうした境遇を周囲の環境のせいにしてしまいませんか。
しかしそんな態度ではいつまでも自分は変われません。

本書は、環境を変えるのではなく自分自信を変えることの大切さに気づかせてくれます。
世の中をうらめしく思ったときに読んでみると良いでしょう。

『鏡の法則』

著者:野口嘉則
出版:総合法令出版

前述の『思いと結果の法則』と似たような主旨の本ですが、本書は特定の相手への怒り・憎しみを消す方法が中心に紹介されています。

対人恐怖症が慢性化すると人を敵視する癖もついてしまったりしますね。
その敵意の背景には、ある特定の人物への(潜在的な)怒りなどがあるのかもしれません。
わたしも脇見恐怖症発症のきっかけとなった人(隣の席の生徒)を憎いと思ってしまうときが多々ありました。

そうしたネガティブな感情を浄化するやり方を小説形式で学べるのが本書です。
文量も少ない(合計100ページ未満)ので、わたしのように読書が苦手な方でも読みやすいでしょう。

『齋藤孝の30分散歩術』

著者:齋藤孝
出版:実業之日本社

散歩やウォーキングのやる気を高めてくれる作品です。
運動療法の必要性を感じながらも実行になかなか移せない方におすすめします。

対人恐怖症が長引くと外出恐怖症にもなったりしますが、やはり家に引きこもり続けるのは心身の健康に良くありませんよね。
わたしは自宅療養で引きこもっていたころが人生でもっとも精神状態が悪かったですし、長年の引きこもり生活によって慢性腎臓病(CKD)にもつながったと考えています(運動不足による動脈硬化が腎機能の低下を招きました)。

とはいえ対人恐怖や外出恐怖が強まると少しの散歩もウォーキングもやりたくなくなるものです。
そんなとき本書を読めば、歩くことの大切さを再認識させられるとともに背中を押してもらえるでしょう。

対人恐怖症の治療に特化した本は少ないですが、ヒントになりえるものは少なくないです。
とくに仏教書は恐怖や不安の克服法(またはそれらとの付き合い方)を学ぶのに役立つと感じています。

今後も良書が見つかりしだい当記事に追加していきますね。
おすすめの本がほかにあればぜひSNSなどで教えてください。