ゴールデングローブ賞にノミネートされるなど、アメリカでは評価の高いIT系海外ドラマ『ミスター・ロボット』(MR.ROBOT)。
Amazonプライム・ビデオで無料配信中だったので、最新シーズンまで視聴してみました。

正直シーズン1~シーズン2の途中までは意味不明でつまらなかったんですが、その意味がだんだんわかってくると結構おもしろかったです。
以下に具体的な感想を書いてみます(ネタバレを含みますのでご注意ください)。

一見すると意味不明な展開だが…

MR.ROBOT

『ミスター・ロボット』では、初見だと意味のわからない展開が多いです。
そのせいでわたしはシーズン2の途中までつまらなく感じてしまい、視聴を止めようと何度も思いました(苦笑)。

しかしのちにそうした意味不明な展開が主人公・エリオットの精神的な幻覚症状によるものだとわかると、とても興味深くストーリーを追えましたよ。

シーズン1は父の幻影のようなものに苦しめられ、シーズン2は父と自分が同一化して二重人格に苦しむようにもなっていきます。

心の病気(対人恐怖症)を持つわたしにとって、こうした心の葛藤は決して他人事ではありません。
物語が進むにつれ「もうひとりの自分(心の中にいる父)」と折り合いをつけていく描写は、何か胸にせまるものがありました。

また、この作品のもうひとつの鍵である「ダークアーミー」の存在も最初は謎だらけでしたが、少しずつ全体像が見えてくるとおもしろいです。
彼らのハッカー集団としての行動は意味不明なように見えて、実は入念に練られた計画にもとづいています。
それがわかったときわたしは、(フィクションですけれど)ダークアーミーの恐ろしさにわりとマジで震えました。

こうした伏線回収はシーズン3でいったん完結するので、そこまで我慢してでも見続けるとスッキリ感が半端ないです。
シーズン1で見切ってしまったら損だと思います。

ストーリーが中二病的

『ミスター・ロボット』の全体的なストーリーは中二病っぽい感じで、大人向け作品とはいえないかもしれません。
エリオットはハッカー仲間とともに世界的な巨大企業にサイバー攻撃を仕掛けるんですが、その動機が「金持ちの富の再分配」のようなんですよ…。
反体制的な、いかにも中二病的な思想がどうしても好きになれなかったです。

しかも「不正に利益を独占している」と主張しているけれど、自分たちだって犯罪行為(ハッキング)してますからね…。
このあたりが短絡的といいますか、もっとほかに方法があるのではと思ってしまって物語の中二病くささを感じます。

ほかにも主人公の幼なじみの元同僚が両親の仇を討つため前述のサイバー攻撃に加担したり、巨大企業の若手エリートが出世欲から簡単に上司の奥さんを殺害したりするのも共感できなかったです。
サイバー攻撃では結果的に数千人以上の犠牲者が出ましたし、こうした衝動的な登場人物たちが中二っぽさをさらに増幅させています。

世界観が暗い

『ミスター・ロボット』の世界観はかなり暗いです。
ドラマの舞台であるニューヨークはもとよりアメリカそして世界の闇まで描こうとしているようにみえます。
ドラッグ、不倫といった(欧米では)日常的なものから、企業と政府の癒着、犯罪組織と警察組織のつながり、国家の犯罪組織支援…などなど。
現実世界にも通じるものがあるでしょうが、やはり中二病者が喜びそうな構図という気がしなくもありません。

また人間の正の部分より負の部分が描がれることが多く、視聴していて気分が滅入りました。
どいつもこいつも表では平気な顔をして裏ではどぎついことをやってたりします。

そのせいか、いまのところ登場人物の誰にも魅力を感じません(苦笑)。
心の病気を持つ者としてエリオットには少し共感できるときもありましたが、彼が幻覚に苦しんでいる描写が妙にリアルでわたしの精神状態まで変になりそうでした(汗)。

演出が凝っている

個人的には『ミスター・ロボット』のストーリーは中二病的だし世界観も暗くて苦手な部類です。
それでも最新シーズン最後まで視聴できたのは、ひとつに同作品の演出に魅力を感じたからだと思います。

前述しましたが、エリオットの幻覚世界がリアルにそして時にはコミカルに描かれていて視聴者を飽きさせません。
精神病の矯正施設で生活していると思いきや、実はそこは刑務所で全部エリオットの幻覚だったとわかったときは「やられた!」と声が出ました。
そのほか昔のコメディドラマのタッチで彼の幻覚が描かれているエピソードも好きですし、ワンカット長回しで撮影されたエピソードも緊張感・臨場感ともに最高です。

挿入歌もいちいち凝った選曲で物語を盛り上げてくれています。
ヒップホップ、R&B、ハードロック、テクノ、ソウル、クラシック、オペラ、ワールドミュージック、現代音楽などなど枚挙にいとまがありません。
どれもそのときどきの場面に合っているのがすごいです。

ミスター・ロボット』は途中までつまらないものの、シーズン2後半以降は評価がガラリと変わる作品といえるでしょう。
これから見る方も、一度挫折してしまった方もぜひシーズン3のラストまでは視聴してみてください。
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