Amazonプライム・ビデオで独占配信中のドラマ『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』(Mozart in the Jungle)を最新シーズンまで視聴したので、感想を簡単に書き残しておきます。
このドラマは、名門オーケストラのニューヨーク・フィルハーモニックの内情を暴露した同名の本が原作となっているそうです。
しかしドラマオリジナルのストーリーも多く、わたしはそちらのほうに良さを感じました。
同ドラマがゴールデングローブ賞を受賞したのにも納得できます。
クラシックの見方が少し変わった
『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』を視聴し始めて驚いたのが、クラッシク奏者たちの生活ぶりです。
アメリカという土地柄のせいか(?)とても自由奔放で、不倫、乱交やドラッグなど好き放題やっています。
暴露本が原作となっているため強めに脚色したのかもしれませんが、クラシックの世界が決して上品なものではないという点が新鮮でした。
また演奏家たちはプロとして食っていくためにコネを使ったり、ときには労使交渉のような泥くさいことも行います。
客前で見せる優雅な印象とは違って裏方ではシビアな戦いを繰り広げているわけです。
考えてみれば、クラシック音楽を生業(なりわい)にしているからといってそれに関わる人たちまで上流とは限らないんですよね。
この作品をみて、クラシック奏者も一般庶民と似たようなものなのかもと親近感を持ちました。
たまにテレビやラジオでクラシック音楽番組を視聴するときがありますが、昔とくらべて少し見方が変わったのは確かです。
オリジナルストーリーが良い
とはいえ以上のようなクラシック音楽界の暴露話は、視聴を続けているうちに当たり前になってきてだんだん飽きてきます(苦笑)。
シーズンを重ねるにつれ、ドラマオリジナルのストーリー展開のほうが楽しめました。
(以下ネタバレを多く含みます)
おそらく主軸となっているのは、主役の男性指揮者と女性オーボエ奏者の恋愛です。
よくあるラブコメディという気もしますが、微妙な駆け引きを続けるふたりの関係性は見ていて飽きません。
どちらも魅力的な人物なので、「早くハッピーエンドになってくれ~」と応援したくなります。
また、女性オーボエ奏者の成長過程も興味深いです。
あいにくオーボエの実力は伸び悩んたみたいですが、指揮者に転向してからはメキメキ上達していきます。
悪戦苦闘しながらも夢の実現に向かっていく様子は素敵でした。
もうひとりの登場人物である、前任指揮者の頑固じいさんが現代音楽(のようなもの)に挑戦しているシーンも好きです。
このじいさんはオーケストラ経営者のおばさんと恋愛関係になるんですが、ふたりの掛け合いもおもしろいですよ。
ほかの主要奏者についても音楽への情熱を感じさせる描写が散りばめられていて、暴露本にはない良心だと思います。
普段は自由に生きているけれど、やるときはビシッとやる。
そんな彼ら彼女らがとてもカッコよく見えました。
ただ、シーズン4の後半に出てくる日本文化の描写は若干ピントがずれていて違和感があります(笑)。
欧米人の抱く日本のイメージなんでしょうけれど、思わず吹き出してしまいました。
登場人物もなかなか魅力的
『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』には、なかなか魅力的な登場人物が少なくありません。
まずは男性指揮者の「ロドリゴ」。
メキシコ人の血のせいかとても陽気で、見ているこちらまで前向きになってきます。
しかもただ明るいだけでなく、心から人間という存在を大切にしているのも伝わってきます。
そんな彼のコミュニケーション術は、対人恐怖症のわたしにとって学ぶ所が多いです。
そして女性オーボエ奏者(のちに指揮者)の「ヘイリー」。
オーボエの腕はイマイチかもしれませんが、音楽へのひたむきな姿勢にとても引き込まれます。
自分を殺さず、はっきり物を言って生きていく姿もすがすがしいです。
ただひとつ、シーズン2で男遊びに興じ続ける様子は余計な描写だった気もしますが。
前任の指揮者の「トーマス」もわりと好きな登場人物です。
ロドリゴやヘイリーに負けないくらいかそれ以上に音楽への情熱を持っているおじいさん。
かなり頑固だけれど時折やさしく、指揮の腕は確かで威厳を感じさせます。
いつまでも音楽の現場で奮闘する彼の姿もまた、わたしに生きるエネルギーを与えてくれました。
そのほか、ヘイリーの友人の「リジー」やオーケストラ経営者の「グロリア」もなかなかです。
彼女たちは演技だけでなく、歌もうまいんですよ。
音楽ドラマをさらに盛り上げてくれています。
『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』は、暴露話のような原作パートよりドラマオリジナルの部分がおもしろかったです。
1話30分で見やすいので、気軽に視聴してみてください(Amazonプライム会員なら無料視聴できます)。
少なくともクラシックに対する先入観は変わるでしょう。